耳の変形とその治療
〜 Auriculoplasty: reconstruction of Ear and Earlobe 〜

耳の写真

大江橋クリニックでは 耳の形の治療ができます

  • 耳介の外傷や腫瘍・変形に関して様々なご相談をお受けしています
  • 外耳(耳介や耳垂)や耳周囲の皮膚と耳介軟骨を治療の対象とします
  • 耳の聞こえ方(聴力)や耳の穴の内部耳鼻科の領域です

耳の形は手術で変えることができます

スタール耳術前 大江橋クリニック 耳介軟骨膜炎後の変形 大江橋クリニック 耳介ケロイド術前 大江橋クリニック 耳介ケロイド他院治療後 大江橋クリニック スタール耳術前 大江橋クリニック
柔道耳術前 大江橋クリニック 小耳症(軽症)術前 大江橋クリニック 先天性耳垂欠損術前 大江橋クリニック 柔道耳術前 大江橋クリニック 先天性耳垂裂術前 大江橋クリニック

上に挙げた不自然な形の耳の写真は、大江橋クリニックで治療する前の耳の症例の一部です。各写真の上にポインタを置くかタップすると術後写真に変わります。そこそこ自然な形に修正できたものもあれば、あまり劇的には改善していないものもあります。
ここでは「治療できる」ことを示すのが目的なので、詳しい説明は省きます。それぞれの耳がどのような治療経過を辿ったかは本サイトの耳の特集ページで詳しく説明していく予定 です。

 現在のところ経過を詳しく見られる症例はまだ一部だけですが、結果の良いものだけでなくわずかの改善に止まったり何度も再手術が必要だったりしたものも含めて、その原因を探る試みも行っていきます。このほかの症例も順次準備を進め、がんばってアップロードしますのでしばらくお待ちください。

高難度の手術を行える施設は全国的にも多くありません

耳の形(見た目)を変える、立ち耳の角度の変更、耳たぶを大きくするなど、耳(耳介、外耳)については様々な手術が可能です。ピアスの孔を塞いだり切れた耳たぶを修復したり、耳にできたできものやケロイドを切り取り、その欠損を再建する事もできます。柔道耳などでは膨れた軟骨を切り取ったり、左右の耳の大きさを調整する必要もあります。
立ち耳や耳たぶの形成など比較的難易度の低い手術は、一部の美容外科でも行なわれています。副耳や耳瘻管などの先天的疾患は一般の形成外科でも治療することができます。

しかし、耳輪、対耳輪、耳甲介などの耳介軟骨の各部分に手を加えて適切な場所で曲げたり、軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり、部分的に削ったりして不自然な耳の形を適切に整える手術(耳介軟骨形成手術)をコンスタントに行える施設は全国的にも数少ないようです。
大学病院の形成外科などでも複雑な折れ耳や定型的でないスタール耳など稀な形の異常、柔道耳(花キャベツ状耳)や外傷による部分欠損や高度な変形、他院術後の修正など高難度の手術を行えるところは少なく、まして一般の美容外科では通常対応できないところが大部分であると思います。

耳の形を変える手術は局所麻酔で行います

大江橋クリニックでは局所麻酔で行える外来手術のみを行なっています。大江橋クリニックは入院設備がないため、定型的な小耳症手術のような肋軟骨移植を必要とする全身麻酔手術や中学生以下の子供の手術は行えません。入院全麻を必要とする手術は入院設備の整った病院で治療を受けられることをお勧めします。ただし最近相次いで名人と言える先生が亡くなったり引退されたりして、ご紹介先には苦慮しています。

耳の形を変える手術の多くは健康保険の適応がありません

耳介の形を修正する手術は多くの場合健康保険の適応となりません。「耳の形」が「耳の機能」と密接な関係になく、「耳の形」の修復が多くの場合「美容的な(見た目の)改善」となるためです。
耳介(外耳)は瞼や鼻、口のように顔の正面にはなくあまり目立たないため、社会生活上の「必須の部品」としての地位が低いのです。耳輪埋没症など 健康保険 の対象疾患は「眼鏡やマスクをかけるのに不便である」という機能的な疾患だから保険適応となるのだと思われます。

耳の形を気にして手術を受けようと決心する方は、目や鼻の形を気に病む方と比べて非常に少数です。瞼の手術や鼻の手術に比べると100分の1以下だと思います。患者数の非常に少ない手術なので、実際に多くの手術を行う経験豊富な医師は全国的にも少数です。(多くの美容・形成外科クリニックのサイトでは、メニューにはあっても簡単なイラストなどだけで詳細な手術の説明や症例写真は見つからないと思います。)
例えば形成外科学会の専門医はおよそ2,000名ほどいます(2020年頃のデータ)が、小耳症など耳の形成手術を主に扱う「日本耳介再建学会」に出席する医師は例年30〜40人程度しかいません。大学病院の形成外科でも耳の患者さんが一年に数人以下という施設もあり、手術指導がきちんと行える研修施設は全国でも片手で数えるほどでしょう。
患者さんがお住まいの近くの医療機関で適切な治療を受けられる可能性はかなり少ないと思います。実際、大江橋クリニックには東北や関東甲信越から西日本全域を含む広い範囲から患者さんがおいでになります。東京や名古屋など美容外科医や形成外科医が集中している地方からもたくさん来院します。
近くのお医者さんに相談しても具体的な話がきけない方が多いと思います。以下の説明が参考になれば幸いです。

耳介軟骨は弾性軟骨といって硝子軟骨(肋軟骨や関節軟骨、鼻の軟骨など)や線維軟骨(顎関節や半月板など)とは違う特殊な性質があり、この性質を持つ軟骨は他には耳の奥の耳管と喉の奥にある喉頭蓋軟骨だけです。 柔らかくて弾力があり、元の形に戻ろうとする性質が非常に強いため力で曲げても後戻りしやすく、戻らないように曲げるには、この性質に対する知識と「コツ」が必要です。
下記のページでは、耳の軟骨を綺麗に曲げるためにどのような工夫をしているか、基礎から分かりやすく解説しています。

耳介形成手術:手術法について(軟骨形成を行なう場合)

  • 手術台に仰向けになり、耳の消毒をし、耳の部分だけ丸い穴の開いたシーツをかけます
  • 両側の場合、片方ずつ(通常は右から)計測してインクで印を付けます
  • 印を付けた部分に皮膚の表面から麻酔の注射をします
  • 耳の輪郭部分を切開して、軟骨と皮膚の間を剥離します
  • 露出した軟骨に浅く切開を入れて癖をつけていきます
  • 必要であれば軟骨を切除したり、位置を変えて他の場所に移植します
  • 軟骨を縫い合わせて耳介のフレームを作成します
  • 皮膚を被せ、ナイロン糸とスポンジなどででポイントを縫い合わせて行きます
  • 切開した皮膚の表面を細い糸で縫い合わせます
  • 隙間ができないようにスポンジやガーゼで耳の両面をパッキングします

術後の経過とケアについて

  • 手術当日は患部を濡らせないので髪は洗えません
  • 通常は翌日の診察で出血していない事を確認します
  • できるだけ早く洗髪できるように配慮します(通常最初の術後診察後)
  • お渡しする内服薬は必ずすべて飲みきってください
  • 1週間以内に2回目の診察を受けて異常ない事を確認させてください
  • 通常は1週間目〜10日目頃に糸を抜きます
  • 腫れや傷跡の赤みは人により数ヶ月続く場合があります
  • タバコは傷の治りを極端に遅らせますのでお勧めしません
  • 食事の制限はありませんがアルコールは控えてください

外的な原因で変形した耳の形を修正する手術

スポーツ外傷後の耳介血腫をきっかけに耳介が変形するいわゆる「柔道耳」、事故・暴力・けがなどによる耳介の外傷後変形、耳介偽嚢腫などの後遺症などを数多く治療しています。
そのほかピアスによる耳切れの修正、拡大したピアス穴・不要になったピアス穴を閉じる、ピアスホールなどに生じたケロイドの切除と耳介の再建、期待通りにならなかった立ち耳など他院美容手術後の修正などもこの範疇に入れて説明します。

柔道耳の例

柔道耳術前 大江橋クリニック 柔道耳術前 大江橋クリニック 柔道耳術前 大江橋クリニック 柔道耳術前 大江橋クリニック

いわゆる柔道耳はスポーツ外傷を契機として時間をかけて徐々に変形します。受傷の位置や頻度、出血の程度などにより変形の程度は様々で、一定の手術様式がありません。多くはバラバラに壊れた軟骨をできるだけ元の位置に整復しながら増殖した部分は切り取り、欠損した部分には切除した軟骨の一部を移植することにより形成します。時間がかかり、難易度の高い手術となります。

柔道耳の正式名称 (ICD10分類)

ICD10分類 : M00-M99 筋骨格系及び結合組織の疾患 > M95-M99 筋骨格系及び結合組織のその他の障害 > M95 筋骨格系及び結合組織のその他の後天性変形 > M95.1 花キャベツ状耳

いわゆる柔道耳、Cauliflower-ear deformity(カリフラワー耳)は,ICD-10分類上の正式病名を「花甘藍(きゃべつ)状耳」と言います。柔道耳はこのほか相撲耳(力士耳)、レスラー耳( wrestler’s ear)などともいわれ,また形状から俗に餃子(ギョウザ)耳などとも呼ばれます。
上記の格闘技のほかラグビーなどの球技や事故、暴行などによる外傷、膠原病や血液疾患、飲酒後などに硬い床で寝る習慣などでも生じ、また特に誘因のはっきりしないものやアトピー性皮膚炎による掻爬に続発するもの(カリフラワー耳を生じたアトピー性皮膚炎症例の1例 角ら 耳鼻咽喉 72-12:839-842 2000)などもあります。
アトピー性皮膚炎によって起こったと思われる症例は、大江橋クリニックでも数人経験しています。その多くは正常に治癒しなかった耳介偽嚢腫に続発したものと考えています。スポーツ外傷以外の原因によるものは、このページでは下に項目を立てて別に扱います。

コラム: 花キャベツについて

カリフラワー↓ 葉牡丹(ハボタン)↓  写真はWikipediaより引用

カリフラワー 葉牡丹

花キャベツはカリフラワーのことです
最近園芸関係のネットを中心に「花キャベツ」を葉牡丹の別名として紹介している記述が見られます。葉牡丹の英名が"flowering cabbage"であることからくる誤解と思われます。葉牡丹と日本名花キャベツ(カリフラワー)は別種です。カリフラワーはドイツ語で "Blumenkohl"(花キャベツ)といい、医学用語はドイツ語由来なので、カリフラワー状に変形したいわゆる柔道耳は「花キャベツ状耳」というのが正式病名です。

柔道耳手術のあらまし

大江橋クリニックでは、柔道耳の手術を積極的・専門的に行っています。柔道耳の場合、硬く凸凹した皮膚からのアプローチで軟骨を綺麗に露出するまでに時間がかかることが多く(通常ここまでで1時間以上)、手術終了まで3時間以上かかることもあります。軟骨を彫刻して耳の形を削り出していくような手術になりますが、その後上に被せる皮膚も部分により厚みが違ったり傷痕があり血流が不安定であったり、良い状態でないことが多く、表皮が壊死したり術後に縮んだりすることがあります。このため、術後も長期間の通院をお願いすることになります。
手術予約日は通常1ヶ月程度先になります。手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。軟骨を削る手術はどうしても術後に痛みが出ます。鎮痛剤を処方しますが、当日翌日は触らなくても痛いです。痛みは日毎に少なくなります。
通常1週間後に抜糸、あとは定期的に通院していただき、数ヶ月経って傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

柔道耳はきれいに治すのがとても難しい

高度に変形した柔道耳の手術は、一言で言って難しいです。ケロイド体質やアレルギー・アトピーなど体質的な原因がある場合も多く、手術直後はきれいに出来上がったと思っても、術後時間が経って術後の腫れが引いていくと徐々に耳介が変形して、肥厚性瘢痕の状態になることがよくあるからです。
耳介の肥厚性瘢痕に関してはあまり資料がありませんが、体質的な原因が主体だと思います。そもそも柔道耳になってしまうこと自体が、体質的なものかもしれません。

通常の術後であれば腫れが引いて形が落ち着いてくる数ヶ月目頃になって、かえって赤みが増し、腫れぼったく厚みも出てくる人がいます。
半年ほど経ってようやく赤みと腫れが引いてくると、今度はずっと腫れていた皮膚がしぼんでくるために、予期せぬところにシワが出てきたり、軟骨を縫った糸が緩んで移植軟骨がずれるなど、予定した形に落ち着いてくれません。手術を試験に例えると、100点取ろうと思って頑張ったのですが出来上がりが80点の人も60点の人も出てきてしまいます。一度できれいに治すのが難しいことがあり、再手術になる場合もあります。

※  再手術の場合、時間をおいて改めて診察の上、規定の料金で手術を行なっています。

様々な工夫で良い成績を目指していますが、今のところそれが現状であることを告白しておきます。

手術症例についてはこのサイト内でいくつか紹介しています。経過の説明は該当ページをご参照ください。
症例写真を見る限り、あまりすっきりと治ったようには見えないかもしれません。手術直後はきれいになったように見えても後で変形してくるために彫刻の荒彫りのようなごつごつした結果になる場合があります。状態の良い時期を選んで仕上げ手術ができると良いのですが、多くの場合費用や時間の都合でそのままで終わり、医者患者ともにやや不満が残ってしまうことがあります。
それでも、何もしないよりは見た目も機能も改善できることが多いので、出来る限り良い状態で終われるようトライし続けています。

術前術後の比較写真(ポインタを載せるかタップしてください)

柔道耳症例:上段:症例1、症例2、症例3(症例解説は準備中)
      下段:症例4症例5症例6(症例解説は以下を参照)

何割かの方は1回の手術ですっきりときれいな形におさまらないことは事実ですが、それを拡大解釈して「柔道耳は手術しても治らない、かえって悪くなるから手術しないほうがいい」という耳鼻科医がいます。しかし、多くの場合手術することにより、耳に入りにくかったイヤホンが入るようになったり、マスクがかけやすくなったり、硬さが取れて楽になったりと、それなりに症状は改善します。また適切な術後管理と、場合によっては再手術によって、かなり正常の形態に近づけることができます。
確かに全く正常な(ケガをする前の)耳に比べ厚みがあったり、輪郭が波打ったり赤みが非常に長引いたりすることはあるのですが、少なくとも「かえって悪くなる」ということはありません。安心して(でも期待しすぎず)手術を受けていただくと良いと思います。

いわゆる柔道耳の原因と症状、耳介組織の状態など

反復する外傷により,軟骨膜と軟骨との間、または軟骨の割れ目を介して軟骨内の間隙に出血が繰り返され(耳介血腫の段階)、炎症を起こしてその部分が徐々に線維化,瘢痕化,石灰化を起こし、また耳介軟骨そのものも破壊と修復を繰り返して、細かく割れては盛り上がり複雑な変形が生じます。また私見ですが、体質的な原因によると思われる皮膚の肥厚性瘢痕もそれに加わって、分厚い結合組織が軟骨の間を埋め表面を覆います。
硬くなって「柔道耳」化したものは形成外科的手術で塊状になった軟骨や石灰化した瘢痕を積極的に切除しなければ治すことはできません。出血や打撲を繰り返したものでは見た目の軟骨の変形がわずかであっても、厚さが増し硬さが残り、圧迫すると痛みが生じるため寝返りが打てないなどの自覚症状が長年続くことがあります。

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外傷後変形の例:暴行を受けた症例

柔道耳術前 大江橋クリニック 外傷後変形術前 大江橋クリニック 外傷後変形術前 大江橋クリニック

症例追加予定

繰り返す外傷で何回も出血し、柔道耳と同じような変形をきたす場合があります。スポーツ外傷の場合は出血する部位や状況に類似性があり、また受傷後に冷却したり耳鼻科で血を抜いたり圧迫したりと、ある程度の治療を受けていることが多いのですが、暴行が長年繰り返されたような場合は軟骨がかなりバラバラに砕けていたり、執拗に同じ場所に打撃が加えられていたりするために、見かけよりも中が激しく傷んでいます。細かく割れた軟骨をできるだけ剥離し、元の位置に整復しながら欠損した部分に切除した軟骨の一部を移植する手術になります。
ただ、柔道耳と異なり、多くの患者さんが体質的に肥厚性瘢痕になりやすいというわけでもないので、腫れが引いてくると比較的綺麗な形に落ち着いてくることが多いようです。

症例1:外傷性瘢痕変形(両耳修正のうち右耳)術後1ヶ月

家人による虐待で繰り返し殴打され、両耳介が高度に変形した症例です。
打撲により耳介血腫となった場合は、耳介血腫と同様な方法で治療ができますが、稀に虐待や職業性の繰り返す外傷によって軟骨がバラバラに折れたり砕けてしまい、いわゆる柔道耳よりもさらに高度に変形してしまうことがあります。

柔道耳の治療と同様に治療しますが、折れた軟骨を丁寧に剥離して元に戻すことが可能であれば、比較的高度な変形でもなんとか耳の形態を改善することができます。不幸にして挫滅が強かったり新たに軟骨が増成している場合、削った軟骨のみでは材料が不足し、同じ側か反対側の耳から耳介軟骨の一部を切り取ってきて移植しなければならないことがあります。
柔道耳と比べて、術後に腫れてくることが比較的少なく、耳の厚みも硬さもそれほど長引きません。ただし、単発ではなく出血や挫滅が長期間にわたって繰り返した場合は、柔道耳と同じように肥厚性瘢痕となって仕上がりがごつごつすることもあります。

症例2:DVによる外傷の例(硬い本による殴打)

ケガをした直後、あまり日をおかずに受診された患者さんの例としてあげました。半年後に腫れが引いて軟骨の変形が固まった後に手術し、改善が見られた例として掲載しました。左が初診時、右が一年後(術後4ヶ月)の写真です。

実際には以下のような経過をとりました。上図左が初診時、外傷後数日の受診で、まだ内出血もあり痛みも引いていません。家族の男性に大きな固い本の表紙で殴られたとのことでした。下図左端は受傷後2週間で赤みが強くなり腫れもありますが、痛みは無くなってきています。
下段左から2枚目は3ヶ月目、3枚目は受傷後約半年、ようやく腫れも引き変形も改善してきたかに見えました。(その間、腫れを引かせる内服薬等で治療を続けています。)
しかしその後、瘢痕が拘縮し(縮み)耳甲介が狭くなり硬さも増してきました。軟骨が増殖してきたようです。耳の穴がほとんど塞がっています。

そこで受傷後7ヶ月を過ぎた頃に手術を行いました。
下図左端は耳の裏側にも割れてズレた固い軟骨が突き出していることを示しています。この軟骨は裏側から切除しました。2枚目は耳甲介の軟骨を切除した後にガーゼを詰めて縫合したところです。
3枚目は1週間後にガーゼを除去したところです。耳甲介の切開創はナイロン糸で縫合してあり、まだ抜糸していません。写真を拡大すると糸が見えると思います。形はかなり改善されています。
右端が手術後3ヶ月の写真です。ようやく腫れが引いてきましたがやや拘縮が再発し、対耳輪の軟骨が少し下側にずれてきています。上段の大きな術後写真は更にその1ヶ月後、術後約4ヶ月ですが、さらに少し拘縮して術直後より耳が前方に倒れてきています。おそらく赤みが引くのにはまだ数ヶ月かかると思いますが、本人の希望もありこれで治療を終了しています。

症例3:5年間に渡り暴行を受けて変形した耳介の例
柔道耳 柔道耳 柔道耳

実はこの症例は現在から見ると技術的には不満足で、掲載するかどうか迷ったのですが、研修医を終えて一人で手術をするようになって、この種の手術を始めて行った約30年前以上前の症例です。
左:発達障害があり作業所の仲間に恒常的に作業に使う工具で叩かれ、5年間暴行を受けて高度に変形した耳です。
中央:切除した軟骨、右:複雑に波打った厚みの異なる皮膚で苦労して耳介を再建したところです。
なんとか耳らしい外観が作成できて、長らく患者さんの説明用アルバムに載せていました。

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耳介血腫

耳介偽嚢腫・耳介血腫後の変形の例

耳介血腫後の変形術前 大江橋クリニック 耳介偽嚢腫後の変形術前 大江橋クリニック 耳介偽嚢腫後の変形術前 大江橋クリニック 耳介偽嚢腫後の変形術前 大江橋クリニック

打撲やスポーツなどの強い衝撃により、耳介軟骨と軟骨膜との間に出血すると、軟骨膜の内部に血が溜まり軟骨も変形して膨れてくる事があります。耳介軟骨の中には血管がないので、基本的に軟骨の内部に出血することはありません。軟骨膜が内側から圧迫されて強い拍動性の痛みを生じます。

きわめて早期(できれば数時間から長くて1日程度)であれば、内部に溜まった血液を抜き、麻酔の注射をして裏と表からキルティングのように糸で縫い合わせる事で元に戻すことができます。(この治療法は保険適応の項目がありません。溜まった血を抜く処置しか明示的に認められていません。ですから耳鼻科の先生がこの処置をやってくれたらかなり幸運です。)
圧迫しておく期間は最低2〜3週間は必要です。時々、耳鼻科のお医者さんに指で押さえておけといわれた、とか、スポンジをテープで止めて明日まで外すなと言われた、とかいう患者さんが、度重なる再発に困って受診されるのですが、そんなに短時間でくっついてしまうような簡単なものではありません。縫合しない場合、何度も再発することが少なくありません。というより再発はほぼ必発です。

再び血が溜まらないように皮膚と軟骨膜の一部を切除したり、ドレーン(管)を通して穴を開けたままにしておくのも有効な手段ですが、しばらく血が流出してくるためガーゼを当てるなど術後の処置が煩わしいことが多く、また通常比較的目立つ傷が残ります。(これは保険適応があります。耳介血腫開窓術)

耳介血腫や偽嚢腫は、比較的早期に手術するとほぼ完全に元どおりになります(下の症例写真参照)。

時間が経って変形が残ってしまった場合

ある程度時間が経つと、血液の細胞成分が破壊吸収されるとともに、瘢痕化して軟骨膜の直下に新たに薄い軟骨ができ、永続的なカプセルが形成されて中に体液がたまった状態が続き、「嚢腫(袋のできもの)」のように安定化してしまいます。膨らんだ前面の軟骨をきれいに切除することが治療の決め手になります。

更に内部に軟骨細胞が増殖して塊状の軟骨を形成し、いわゆる柔道耳のように変形することもあります。こうなると、軟骨の一部を切除して形よく削りなおし、耳の形を再建する必要も出てきます。

症例1:工事現場で角材が当たり耳介血腫になったが、そのうちひくと思い放置していた

ヘルメットを被っていたので痛みがそれほどなく、腫れた形のまま時間が経ってしまった様です。新しい血腫のように見えますがカチカチに固く、2枚に分かれた軟骨の表側の部分をきれいに切除して皮膚を戻し、縫合したところ変形なく完治しました。

耳介偽嚢腫の例

耳介血腫と似た疾患に「耳介偽嚢腫」があります。臨床の現場では、耳介血腫と区別されずに治療されていることが多いようです。しばしば混同されて記述がちぐはぐになっていることがあり、耳鼻科医のサイトや医療専門のサイトでも両者を区別しないためわかりにくくなっている場合があります。

治療法は耳介血腫と同様ですが、圧迫だけで分裂した軟骨が接着することはまずなく、変形した軟骨を切除する手術が必要です。

耳介偽嚢腫は1966年にEngel D.が世界で初めて報告したもので(Pseudocysts of the auricle in Chinese. Arch. Otolaryngol. 83:197-202 1966)、日本では1987年に小宗らによって初めて報告されました(耳鼻と臨床 33:789-791 1987)。特にはっきりした外傷の既往がなくても起こり、いわば突然耳が腫れてくるもので、内容液も血液ではなく黄色調透明ないわゆるリンパ液です。無痛性のことが多いようです。更に内部の細胞が増殖して不完全な軟骨を形成し、いわゆる柔道耳のように軟骨の塊を形成することもあります。(上の柔道耳参照)
軟骨細胞から放出されるLDH4, LDH5, IL-1, IL-6 などにより、慢性の炎症による軟骨破壊と軟骨増生が同時に起こり軟骨内に隙間ができる(intracartilagenous space formation)ことが誘因になるという説があります。表と裏の2枚に軟骨が剥がれてその間に液体が溜まるのが特徴です。
耳の軟骨は成長に伴い前葉と後葉の二枚の軟骨膜の間に複雑な形が形成され、実際には一枚の板状の軟骨ですが、耳介偽嚢腫などの手術をしていると、まるで耳介軟骨がもともと2枚あるかのようにきれいに表裏2枚に分かれた軟骨の間にリンパ液が溜まっていることがよくあります。そのサンドイッチ状の軟骨の周囲をぴったりとラップしたように丈夫な軟骨膜が覆っています。

症例2:これといった誘因なく耳介が膨らみ、そのうちひくと思い放置していた

外傷や掻爬などの記憶が無く、朝起きると腫れていたそうです。治療法は症例1と同じで2枚に分かれた軟骨の外側を切除し皮膚を戻します。右図は抜糸直後でまだ腫れて赤みがあります。

※ 耳介軟骨炎・軟骨膜炎

耳介血腫や耳介偽嚢腫に続発して、感染などを契機に強い炎症が起こり、軟骨が溶けて吸収されてしまうことがあります。軟骨膜炎そのものは強力な抗生物質や消炎剤を投与することで収まりますが、軟骨内に血管が無いことや細菌と白血球の戦いの場となる結合組織が貧弱であることなどから、治癒するまでに時間を要し、その間に軟骨が高度に変形することがあります。

変形した耳介軟骨は切除したり削ったりして形を整えますが、軟骨移植術が必要になることもあります。

症例:耳介軟骨膜炎の例

上の症例は血腫などに続発したものではありませんが、軟骨膜炎で軟骨が溶けて吸収されてしまった例です。軟骨ピアスを開けたが化膿して、何度も膿を抜いているうちに変形したということです。

この症例では崩れて溶け残った耳介軟骨を切除し、位置をずらし移植して形を整えましたが、支える力が不足して時間経過とともにやや後戻りして、シワがよってしまいました。

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他院で受けた耳介手術の修正

これまで立ち耳、柔道耳、スタール耳、埋没耳など多くの患者さんの、他の美容外科や形成外科で受けた美容・形成外科手術の術後変形を治療してきています。再手術は必要な軟骨が前医によって切除されていたり、無理に折り曲げて太い糸でガチガチに縫合されていたりで条件が良くありません。

耳介軟骨形成を伴う耳介形成手術は通常片側330,000円(税込)で行っていますが、他院で行った立ち耳手術などの術後変形に対して修正を行う場合、非常に時間もかかり困難な手術となるため片側の手術料を550,000円(税込)程度に設定しています。実際の料金は難易度により変更することがあります。ご相談ください。

立ち耳の術後変形
耳の写真

Googleによりショッキングなコンテンツとの指摘がありましたので、以前より更に彩度を落として掲載しています。ポインタを載せるかタップすると元画像(やや彩度を落として加工したもの)がご覧になれます。

立ち耳の手術には様々な術式がありますが、多くの場合対耳輪軟骨を切開してナイロン糸などで数箇所縫合してあります。しばしば軟骨を折りたたむ場所が元の耳の形に対して不適切だったり、左右で切開位置や縫合の仕方が異なっていたり、医師独自の特殊な方法による手術でかえって変形したりといったことが起こります。

大江橋クリニックでは、まずできるだけ手術前の状態を復元するようにしています。軟骨が不適切な場所で折ってある場合は固定した糸を外し できるだけ平らに戻してから、自然にカーブさせる位置を探します。

軟骨は直線的に折り曲げるのではなく、木の枝を矯めるように柔らかく矯正することが大切ですが、そうした技術を持つクリニックは少ないようです。

耳介軟骨の変形の修正は自費です。基本的には再手術は通常の耳介軟骨修正料金の1.5〜2倍程度としますが、軟骨移植が必要であったり、特殊な手技を必要とする場合は、料金を追加することがあります。

小耳症術後の二次的修正について

小耳症は通常片側の耳介が極端に小さく、痕跡的であったり位置の異常を伴い、外耳道が欠損している場合もあります。

標準的な小耳症手術ではまず自分の肋軟骨を用いた耳介フレームを作成し、耳介の部分に移植します。そのままでは頭に張り付いたような耳になってしまうので、その後二期的に耳起こし(耳介挙上)を行なって耳介の裏側を作成します。

肋軟骨移植を必要とする手術は全身麻酔が必要となり、入院設備のない当院では行えません。ただし術後の耳の形の微修正、耳介の脱毛、その他の二次的なトラブルは対応可能です。ご相談ください。

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ピアス耳切れの原因と手術

ピアスによる耳切れは、次第に縦長になっていたピアスホールの端が徐々にちぎれそうに細くなり、ある日気づくと切れていた、ということがほとんどです。切れた時には痛みもなく出血もないのが普通です。外力(暴力等)によって引きちぎられることは滅多にありません。

原因は繰り返すピアストラブルです。ピアスホールが感染を起こし、皮膚に常在するブドウ球菌などによって重さのかかる穴の下側の皮膚が徐々に溶けていきます。上の方の傷は反対に徐々に治っていきます。徐々にピアスの下側の皮膚が溶けては治っていくため、切れた断面は皮膚が張っていても傷跡の組織に置き換わっています。
平らに見えても断面は丸みを帯びているため、そのまま縫い合わせても傷は綺麗になりません。耳たぶを元の丸い形に戻すのは簡単ではありませんが、切開のデザインを工夫することにより、丸い耳たぶを作ります。ケロイド体質の方を除き、傷痕もほとんど目立たなくなります。通常は、傷跡の組織を一部切除し、周囲の皮膚をジグザグに切って皮弁を組み合わせ、形を整えて縫い合わせる必要があります。

一般的には傷の治療を優先し、ピアスホールを残すことはできません。完全に治ってから希望があれば新たに開けなおすことになります。

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ピアス穴は前後に2つある

ピアスホールを閉じる手術を行っています。小さな穴ですが、手術に際しては前後にある穴の間をつないでいる薄い皮膚のトンネルを残さず摘出する必要があり、意外に難しい手術です。単に閉じるだけでなく耳たぶの形を修正したり左右揃えたりする場合には、耳垂形成術の扱いになります。ピアスホールの部分が盛り上がって硬くなっているなど、ケロイド状になっている場合も手術で切除できます。この場合はできものの手術を参照してください。

  • 出来るだけ小さい傷で納めるため、通常は直径2ミリほどのパンチを使います
  • 穴の入り口が変形したりへこんだりしている場合、平らに戻すか、平らでない部分を切り取る必要があります
  • 細い皮膚トンネルを覆っているチューブ状の皮膚を残さず取り出す必要があります
  • 耳が変形しないよう、耳の表裏で縫合する方向を変える必要があります
  • あとで手術の傷の近くにピアスを開け直すことを考え、傷の影響が及ばないように治す必要があります
  • 万一表面が平らにならなかった場合、平らにするために再手術するか検討する必要があります

ピアスホールを閉じる手術。小さな穴にガイドの針やブジーをガイドとして通し、それに沿わせて2ミリパンチで前後にある穴の間をつないでいる薄い皮膚のトンネルを残さず摘出する。取り残しがあると耳の中に皮膚の島が取り残されて粉瘤のような腫瘤を生じる。

拡張したピアス穴は、切除方法も変わってくる

バーベルなどで拡張したり、トラブルで縦に長く伸びたピアス穴などは通常の方法では治せません。ピアス穴が大きく広がっていたり縦長になり切れかけているような場合は、穴ふさぎではなく耳切れ(耳垂裂)の手術として対応しています。特に拡張したものは、周囲の皮膚も引き伸ばされて傷み、正常な皮膚とは伸び縮みの特性も異なっているため、そのまま縫い合わせても平らには戻りません。表と裏で別々にZ形成術やその他の皮弁術を行いますが、術後に傷が変形して縫合部がへこんだりすることがあります。凹みや変形に関しては目立たないよう努力しますが、術後には何らかの「傷跡が残る」ことはご了承いただきます。

以前はピアスホールを残したまま一部を切り取って穴を縮小する手術を行っていましたが、創部にシリコンチューブなどを留置しておく必要があり、一度感染を起こすと抜かない限り治癒せず治療に難渋することがあります。このため現在では、一度完全に塞いでから開け治すことをおすすめしています。

ピアスホールの穴ふさぎは通常塞ぐ数によって費用を計算していますが、難易度や大きさによって決めることもあります。拡張したものや切れたもの(切れそうなものも含む)は別の料金体系としています。

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先天的な耳の形を変える手術

耳介形成手術の技術的側面に関心のある方は、下のリンク先をご覧ください。患者さんばかりでなくこの様な手術に関心のある医師の皆さんにも参考になるような技術的なお話や術中写真なども掲載しています。

術中写真等が表示される場合があります。血液が写り込む場合などは彩度を落とすなど調整をしていますが、血液の写った写真などが苦手な方は用心してご覧ください。

立ち耳

立ち耳の例:右端は他院で手術したところ不自然な折れ目が生じた

立ち耳術前 大江橋クリニック 立ち耳術前 大江橋クリニック 立ち耳術前 大江橋クリニック 立ち耳他院術後 大江橋クリニック

立ち耳は日本では400人に一人程度生まれると言われ、耳介の先天異常の中では比較的多い変形です。欧米では「奇形」とみなされますが、日本を含めアジアでは正常範囲の変異とみなされ、病気の範疇には入りません。
耳介の形は人により、また左右により違い、立ち耳の形状にも様々なバリエーションがあります。従って立ち耳修正の手術もまた、その人ごとに適切な方法を考えなければなりません。しかし多くの形成外科や美容外科では、一律に耳の裏側から対耳輪を切開して折り曲げる手術法を採用することが多く、このため切開したところで鋭角に折れて不自然な仕上がりに悩む患者さんが多いようです。

これは、耳の手術法を習える施設が国内にはほとんどないため、多くの医師が手術雑誌などを見て、学会の推奨する、耳介上部の軟骨に裏から3本ほど切開を入れ折り曲げて後ろに寝かせる方法を、患者の耳の形に関わらず採用するためだと思います。しかし実際には、典型的・教科書的な立ち耳の患者さんは案外に少なく、他の変形を合併していたり、そもそも立ち耳ではない患者さんを誤って診断していたりします。診断自体が誤っているのでは、そうした方法で自然な形にはならない可能性が大きいと思っています。
大江橋クリニックでは、左右それぞれの耳を別々の方向から見たときより自然に見えるよう努力しています。教科書的な標準的な手術法では対耳輪の微妙なカーブを繊細に表現できないため、少々手間はかかるものの後戻りの少ない方法を工夫しています。

【参考】
様々なクリニックで行われている立ち耳の手術の術後結果の例。一般的な医療水準を理解してもらう目的なので、他院を貶める意図は無く引用元は明示しません。いずれも「軟骨を折って裏から縫合する」術式と想像されますが、そのため対耳輪が細く折れて鋭く直線的になってしまっています。
(一言解説)左から
 ①対耳輪をまっすぐ折り曲げてあるので、この写真ではわからないがおそらく正面から見ると耳の中央あたりが凹んで見えると思います。
 ②折り曲げる位置が外側すぎ、かつ上の方まで縫合してあるので、おそらく正面から見ると耳尖が尖って見えると思われます。
 ③耳甲介が大きすぎるタイプの耳に、狭い対耳輪の外側を折り曲げたため、不自然に大きな耳に見えてしまうと思います。
 ④前項と同じく耳甲介が大きすぎるタイプの耳に、対耳輪をまっすぐ折り曲げたため、不自然に四角い耳に見えてしまいます。
 ⑤対耳輪を鋭くまっすぐ折り曲げたため、①と同様に中央が後ろに倒れすぎて凹んで見えると思います。
 ⑥折り曲げる位置が外すぎ、折り方も鋭すぎるため、対耳輪が重複しているような奇異な外観になっています。

一方、下に示したのは右から、耳を失った人が装着する偽耳(エピテーゼ)の例、ピアス展示用に作られた耳のマネキンの例、ネット上に挙げられている正常と思われる耳の写真の一例、大江橋クリニックで行った立ち耳手術の術後写真(この下に挙げた症例)です。いずれも対耳輪がある程度太く柔らかい曲面でできていることがわかります。

代表的な立ち耳の症状は対耳輪の曲がりが浅く耳全体が平らに起き上がっているというものですが、実際には様々な形があり、耳の裏側の筋肉の発達が悪いために耳全体が起き上がっていることもあれば、対耳輪が横に折れてコップ耳のような変形を起こしている場合もあります。

立ち耳手術の一例

耳の形に正解はなく、人によって形は様々ですが、耳介軟骨は一般にごく一部(対耳輪第1脚が耳輪の中に隠れていく部分など)を除いて鋭く折れたところがなくなだらかな曲面で構成されています。この柔らかなカーブを保つために大江橋クリニックでは様々な工夫をしています。

上記症例の詳細。片側の立ち耳。対耳輪の縦方向の曲がりが少ないだけでなく、耳の中央あたりが不自然に凹み、左側の正常な耳とはずいぶん形が異なっています。一般的に美容外科や形成外科で行われているような、耳の上方を後ろに折り曲げるだけの手術では改善できません。軟骨を自然に曲げるため一旦前面の皮膚を取り除いて軟骨に細かく浅い筋を入れて行きます。手術時間は片耳で1時間半〜2時間くらいかかります。

クローズ法(埋没法)と呼ばれる立ち耳手術は行ないません

軟骨膜を切らずに糸で縛るだけのような簡単な手術法では、耳のような弾性軟骨の形を長期間にわたって保たせることは困難です。耳介軟骨は元に戻ろうとする性質が非常に強く、糸が切れれば手術の効果はすぐになくなってしまいます。
また、後で説明するように、糸だけで縛った耳の形はどうしても不自然になります。通常は耳の前後面を切開し、軟骨膜を露出させてメス等を用いて形を整える必要があります。 術後は1週間程度耳全体を包み込むようにガーゼ等で圧迫する必要があります。

本当に立ち耳ですか?

患者さんの耳の状態が本当に単なる「立ち耳」なのか、は診察を受けていただかないとわかりません。

耳介(外耳)の形には多くのバリエーションがあり、一見立ち耳のように見えても、変形の仕方が異なりスタール耳を代表とした様々な先天性耳介形成異常の一種である場合もあります。修正相談に来られた患者さんの中には、典型的なスタール耳に対して、立ち耳の標準的な手術が行われていたこともあります。またいわゆるコップ耳と呼ばれる変形で、対耳輪を折り曲げたためにかえって奇異な形になってしまった方もいました。どういう方法が向いているかは「立ち耳」という言葉だけでは分かりません。できれば一度診察を受けてみてください。大江橋クリニックでは形や症状、左右差によって左右それぞれを別の耳と考え、様々な手術法で手術しています。

大江橋クリニックで行っている立ち耳の手術法に関しては、この後にも詳しい説明があります。興味のある方はご覧ください。

立ち耳の手術法の詳しい説明

立ち耳は対耳輪を折るだけでは綺麗に治りません。なだらかな曲面を保って部分ごとに少しずつ曲げて行くことがきれいな対耳輪を作るコツです。

糸の力で曲げようとすると失敗する
耳の写真

美しい耳は一部の鋭角に作らなければならないポイントを除き、ほとんどすべてがなだらかな曲線、曲面で構成されています。
例えばこのページのトップにあげた耳の写真は、写真素材を扱うサイトで見つけた「きれいな形の耳」です。シャープな線は対耳輪の下脚(第1脚)の部分のみです。立ち耳の手術では、対耳輪を鋭角に折ってはいけません。

耳の写真

残念ながら、厚紙を折り曲げる如く二つに折り畳んだような手術を良く見かけます。

インターネットで検索すると出てくる術後写真も、ほとんどが対耳輪を鋭く折り曲げています。またそのように解説しているサイトさえあります。
一旦こうした手術をされてしまうと、柔らかなカーブを取り戻すのはとても大変です。

↓例えばある著名なクリニックではこんな術後写真をのせています

耳の後ろを切って軟骨を3カ所深く切開した上で糸で縫合したそうです。

右の当院の症例(抜糸直前でまだ腫れています)と対耳輪のカーブを比較してみましょう。

↓左右とも耳輪が波打っています (下段は当院症例)

上左で見たのと同じ症例です。一部を強く曲げたために耳輪が波打っています。

下の写真で当院の症例の術前術後を見てみましょう。
上右と同じ症例ですが、術前より耳輪全体が自然に後ろに倒れた事がわかります。

左:術前 右:術後
対耳輪ははっきり見えるようになりましたが、耳輪は凹凸なく正面から見てもなだらかです。

※ 実際には理想のカーブを描くのが難しく、再調整しなければならないケースもあります。

上で紹介した症例

強く折り畳まず自然なカーブを作る

立ち耳手術の保険適用について

お問い合わせが多いご相談ですが、その多くは「立ち耳の手術を保険でやっているか」というものです。いわゆる「立ち耳の手術」(立っている耳を後ろに寝かせる手術)には保険を適用することができません。

厚生労働省近畿厚生局や健康保険審査機関に問い合わせて確認し、立ち耳の手術に健康保険を適用する事はできないとの返事をいただいておりますので、大江橋クリニックでは立ち耳の手術に関してはすべて自費治療とさせていただいております。

他の医療施設では保険で行っているとの情報は多々耳にしますが、その場合は何か別の病名を便宜的につけて保険適応としているのかもしれません。もしそうだとすれば、医師の好意とはいえ「診療報酬の付け替え請求(本来保険請求できない処置を、別の病名や手術名に付け替えて請求する)」という違法行為の疑いもあります。
保険の審査は地域格差があり、審査する市町村や担当医師によっては保険請求が通るのかもしれませんが、少なくとも当地では難しいようです。
保険でやっている医療機関を教えて欲しいという問い合わせもいただきますが、上記のようにもし行っているとしても個々の医師がこっそりと患者さんに便宜を図っているものと思われますので詳細を書くことはできません。

健康保険の適応にならないのは立ち耳が病気ではないから

日本を含むアジア諸国では、文化的社会的に耳の形に関しては許容度が高く、立ち耳に関しても、特に子供の頃には「ミッキーマウスのよう」「おさるさんのよう」などと、むしろ「かわいらしい」「愛らしい」ものとして愛される傾向があります。このため、正常な耳を立ち耳にしてほしいと言う依頼もあります。(正常な耳介を異常な形にするのは医療倫理に反すると考え、行なっていません。)
ヨーロッパでは人間と動物を明確に区別する宗教観から、動物の耳に似ていることは社会生活上著しい不利益を被りますが、日本で生活している限り耳の形が風変わりであるからといってそのようなことにはなりません。

最近ではヨーロッパ的な習慣が広まり、またピアスを着用する際に美しく見えないなどの理由から手術を希望する方が増えましたが、一般に社会生活上著しい不都合があるとは考えられないため、通常は耳介の形の異常は健康保険の対象となりません。

他院の美容手術で変形した場合の再手術

立ち耳の手術などは様々な術式があり、時には上で示したように軟骨を折りたたむ場所が不適切だったり、左右で異なっていたり、特殊な手術でかえって変形したりといったことが起こります。

大江橋クリニックでは、まずできるだけ手術前の状態を復元し、折れた場合は平らに戻したり固定した糸を外したりしてから、自然にカーブさせる位置を探します。

軟骨は折り曲げるのではなく、木の枝を矯めるように柔らかく矯正することが大切ですが、そうした技術を持つクリニックは少ないようです。

耳介軟骨の再修正は自費になります。いったん元に戻してから再度曲げるという、時間のかかる手術になる関係上、基本的には通常の耳介軟骨修正料金の概ね50%増しになります。さらに軟骨移植が必要であったり、特殊な手技を必要とする場合はもう少し高額になる場合があります。

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スタール耳

スタール耳の例:耳全体を裏返したような変形の場合もある

スタール耳術前 大江橋クリニック スタール耳術前 大江橋クリニック スタール耳術前 大江橋クリニック スタール耳術前 大江橋クリニック

スタール耳とは、対耳輪の形の異常で一般には存在しない3番目の脚が生じ、その部分が三角に突き出して耳輪の丸みが失われた変形です。尖って見えるため動物の耳、悪魔の耳と揶揄され、宗教的に忌避感の強い欧米では嫌われる耳の代表ですが、耳の形に寛容な日本では大人の方でも変形が残ったまま生活されている方が多いようです。

耳介の先天異常の中では比較的多い変形ですが、形の変異が多く症状によって治し方が異なります。難しい手術の一つです。

スタール耳の手術例

▶︎ 上段が典型的なスタール耳の手術例。尖った部分の皮膚は非常に薄い上軟骨と強固に接着しているので、穴を開けずに剥がすのは時間がかかり難しい。飛び出した第3脚は裏側で接着したように折れており、単純に矯正しても平らには戻らない。耳輪の太さを出すのにもひと工夫が必要。
▶︎ 下の症例写真は第2脚の欠損を合併したスタール耳とみるか第2脚の位置異常(脚の開きが180度)とみるか、いずれにせよ定義上スタール耳ではありませんがスタール耳に症状がよく似た変形の症例です。
左から初診時、手術直前、術後1日目、術後13日目(全抜糸時)のものです。抜糸後受診なく、術後長期成績は不明です。

スタール耳の形状は様々ですが、一応の基準は通常は二股に分かれている対耳輪が三又に分かれて第3脚が存在することです。この第3脚がしっかり折り畳まれていると先端が尖った、上の症例のような形になります。

[ 日本小児遺伝学会 国際基準に基づく小奇形アトラスより引用 } →

この尖った部分は皮膚が非常に薄く、軟骨としっかりと接着しているため、はがすと穴があいてしまうこともあります。まず軟骨の形を修正してから、その上に皮膚をかぶせて丸い耳輪を作りますが、必ずしもきれいに丸く作れるとは限らず難しい手術の一つです。

第3脚がくっきり折り畳まれておらず緩いカーブを描いているような時には、全体として立ち耳のように見えることがあります。しかし一般的な立ち耳の手術できれいなカーブを作ることが難しく、かえって変形してしまうこともあります。スタール耳の形は様々で、手術にはそれぞれ工夫が必要です。
スタール耳の手術は軟骨の形を整える際に表側と裏側の両側から曲げていく必要があるため、時間のかかる手術になります。

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先天性耳垂裂とは

耳垂裂とは、耳垂(耳たぶ)が丸い形に整わず、2つに避けたように見えるものを言います。正常側に比べて耳たぶ自体も一部が欠損したように小さいものが多いようです。

先天性耳垂裂の手術

耳たぶの手術は、耳介軟骨形成を伴う手術に比べると皮膚だけの操作である分難易度は少し下がりますが、組織の欠損が大きかったり複雑な形成を伴う場合は(全層植皮術、皮弁形成術などが加わるため)それなりに時間がかかり難しい手術となります。

耳垂(耳たぶ)の形成手術は軟骨の切開を伴わないので、術後に強い痛みを感じることはあまりありません。安心して手術をお受けください。

ピアスホールが拡張して2つにさけるピアス耳垂裂は、ピアスが原因となった二次的なものであり、先天性のものとは治療法が異なります。裂けた部分の皮膚を一部切除するとともにZ形成を行なう事で、かなりの程度まで目立たなくできます。

症例1:先天性耳垂裂の手術例

耳垂裂というよりは耳垂(耳たぶ)の欠損と言っても良い症例です。上図中央の写真でわかるように、耳たぶのあるべきところに深い穴があいていました。穴を閉じ、耳の裏側に星型の皮弁を作成して耳たぶを作ることにします。右側の手術終了直後の写真で赤く見えるところが深い穴のあったところで、まだ縫合部から出血しています。
下図は左から抜糸直後と1ヶ月目の写真です。まだ赤みが強いですが欠損のない正常側(右の写真)と比較しても大体同じ大きさに揃えることができました。

症例2:先天性耳垂裂の手術例

一見ピアス耳切れのように見えるが生まれつきとのことで、典型的な耳垂裂の症例。割れて見えるのが嫌でずっと接着剤でつけていたが皮膚がかぶれるようになったとのことで受診した。耳介上部もスムーズな丸みがなく、やや小さくて波打っているなど軽度の先天的な変形があるが、そちらは手術するほどではないと希望しなかった。右はZ形成を組み合わせて縫合した抜糸直前の写真。

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症例準備中

袋耳の写真

耳輪埋没症は健康保険の適応が明示されている数少ない疾患です。このため、保険診療を行う医療機関に患者さんが集中する傾向があり、手術法も標準的な術式がいくつか公開されていて、症状(耳の形)が比較的一定していること、マスクやメガネが着用できないことなどから、小学生くらいの段階で手術するケースが多いようです。従って大江橋クリニックでは、大学病院等で子供の頃に手術したがうまくいかなかった患者さんなどが相談にくる程度で、あまり多くの症例がありません。
この写真も小児科学会で公開されている写真を転載したものです。

手術例はありますが症例写真についてはまだ掲載できるものがありません。

埋没耳に類似したいわゆる袋耳(コップ耳、折れ耳など、形によって様々な呼び方がある)は、軟骨の発達が悪く成長に伴って十分に展開されなかった場合が多く、正常側に比べて耳自体もやや小さいので、左右対称に近づけるのが難しい手術の一つです。
多くの場合、耳輪が一部埋没、屈曲しているだけでなく皮膚も不足するため、軟骨移植術、複合組織移植術、全層植皮術、皮弁形成術などを同時に行う比較的侵襲の強い手術で、時間もそれなりにかかります(片耳で1時間半〜3時間程度。)術後、麻酔が切れるとほぼ全員がある程度の痛みを感じます。終了直後に痛み止め、止血剤を含む術後のお薬を内服していただきます。

症状によっては、広い範囲の皮膚を剥離する必要があり、全身麻酔を必要とします。
大江橋クリニックでは全身麻酔の手術は行いませんので、このような場合は専門施設をご紹介します。

いわゆる折れ耳には様々な変形が含まれます

折れ耳と一口に行っても、単に耳介の上部が上方に立ち上がらない場合もあれば、対耳輪の一部が欠損していたりカップのように丸くなっていたり (コップ耳と呼ばれることもあります)、耳介軟骨が小さく小耳症の範疇に入れるべきと思われるものもあり、通常と逆方向に折れ曲がるものなど様々です。
一人一人の症状に合わせて、場合によっては左右ごとに手術法を考えなければならず、難しいものです。大江橋クリニックでは病名をどうつけるべきか悩むような変形もここに含めています。

特殊な形の耳の例

奇異な耳介変形術前 大江橋クリニック 小耳症(軽症)術前 大江橋クリニック 奇異な耳介変形術前 大江橋クリニック 奇異な耳介変形術前 大江橋クリニック

耳介軟骨の形をかえる手術

何をもって特殊とするか、ですが、〇〇耳、と一般的な(専門用語でない)名前のついている比較的よく見られる変形は省き、通常あまり見かけることのない変形についてまとめてみます。
耳輪、対耳輪、耳甲介などの耳介軟骨の各部分に手を加え、軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり一部を削ったりして、耳の形を様々に整えることができます。

外観を整える手術は通常は美容手術として自費で行っています。しかし程度によりますが、社会通念上 異様な外観を呈するものは、詳細なコメントをつけることにより保険適応を試みることもあります。

比較的特殊な症例

特殊な耳介変形他院術後 大江橋クリニック 特殊な耳介変形術後 大江橋クリニック 特殊な耳介変形術後 大江橋クリニック

一つの耳介内に様々な変形があり、子供の時にかつて耳介形成で著名であった関西の某有名大学病院(もっとはっきり言ってしまえば当クリニック院長の出身校である京都大学形成外科)で耳垂裂の手術を受けたが、あまり良い結果にならず残りの異常も改善できなかったとのこと。
大江橋クリニックでは軟骨を曲げ直したり位置をずらしたりして、複数回の手術で少しずつ正常な形に近づくよう修正した。中央の写真は耳たぶ、耳甲介、耳輪脚、耳輪のカーブなどを数回にわたり微調整した後、仕上げ手術として細かい調整を行う際の術前デザイン。耳介上部の軟骨が薄く、特に耳輪の立ち上がり部分(点線)がマスクをかけるとゴムの力で折れ曲がって痛いため、付け根の軟骨を一旦切り離し、上にずらして移植し、2枚重ねにして曲がらないよう補強しました。見た目ではなく機能的な改善(マスクがかけられるようにする)を目指した手術となりました。
微妙な変形や術後瘢痕などがあちらこちらに残っていますが、パッとみた時の印象はかなり改善したと思います。

大学病院の手術が最善とは限りません。かつての京都大学形成外科は耳の手術では西日本1と言われ、中部地方から九州あたりまでの患者さんを一手に引き受けていましたが、それでもすべての患者さんを満足させることはできませんでした。今でもいくつかの大学病院形成外科で手術をして、不満足な結果に落胆し、大江橋クリニックを受診される患者さんがあります。耳の症例が少ないため研修医への指導を兼ねた実験的な治療となる施設もあります。また大手美容外科などでも、耳の経験の少ない医師により軟骨の粗雑な切開を受けてかえって不自然な変形を起こしてしまうことがあります。一旦不自然に折り曲げられた軟骨は、出来るだけ元の形に戻して平に縫合してから曲げ直しますが、左右非対称に一部を切り取られていたりすると、なかなか自然なカーブを再現することが困難になります。

症例:飛び出した対耳輪を低くする手術

耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)よりもその内側の対耳輪が外に飛び出していて目立つため、対耳輪をやや低くして形を整えました。立ち耳の修正手術を受けて耳輪が後ろに倒れすぎたような場合にも似たような変形が目立つことがあります。その際は立ち耳の手術をやり直すことである程度修正可能です。軟骨の折り畳まれる位置をずらし、一部を削ったりして形を調整しています。

上の症例ではイヤホンが外れやすいのを修正する目的の一環として軟骨の折れ曲がる位置を耳甲介の内側に移動させ、耳甲介の形を変えています。飛び出していた対耳輪はやや平らに矯正しています。

同様の手技で、対耳輪の幅を太くしたり、逆に細くしたりすることも可能です。症状によっては耳介の表裏両方から軟骨を操作しなければならないこともあります。
軟骨膜切開やナイロン糸による矯正など様々な手法を組み合わせます。

例: 耳輪(耳の縁)を太くする、強調する手術

耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)が薄く、きちんとロール状に巻き込まれていない場合は、軟骨の曲がりを調整するなどして縁を作ります。
軟骨移植が必要となったり、皮膚と軟骨の位置をずらしたりする必要があります。

逆にロールの巻き込みが深く、縁が太くなっている場合、それを細く調整することも不可能ではありません。軟骨の量が足りないこともあり、その際には一部を切って重ね合わせ、ずらしたりして形を調整することもあります。
曲がりのクセが強く、小幅な改善にとどまることもあります。

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大きい耳を小さく、小さい耳を大きくする手術

耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)を一回り小さくする手術をすることがあります。
軟骨の折り畳まれる位置をずらしたり、一部を切り取って重ね合わせたりして形を調整しますが、自然さを損なわずに一回り小さくするのは難しく、特に耳の前面に傷跡を残さないようにするにはいろいろな工夫が必要となります。

小さな耳輪(外耳の輪郭を作る縁取り部分)を一回り大きくする手術も不可能ではありませんが、軟骨の量が足りないため移植が必要になります。一般の医療施設では肋軟骨や鼻中隔軟骨を取ってきて移植することが多いようです。
しかし耳介軟骨とは性質が異なるためいずれも一長一短です。できれば同じ側の耳介軟骨の一部を使い、位置を変えたり、一部を切って重ね合わせ、ずらしたりして形を調整したいところです。
しかし、その場合は使える材料に限りがあり、小幅な改善にとどまる可能性があります。

どれくらい大きいと異常と言えるのか

左右で大きさが違う場合はわかりやすいのですが、耳の大きさはもともと個人差が非常に大きいので、どこからが異常かと線を引くのは難しいものです(小さい方も同じです)。経験上、耳の縦径はおよそ6センチ程度を標準にプラスマイナス10%くらいの範囲にあれば異様には見えないと思います。横径は縦径の半分くらいです。一般には女性の方がやや小ぶりなことが多く、耳介の厚みも薄く耳垂(耳たぶ)も小さいことが多いようです・
耳の穴の周囲の凹み(耳甲介)はおよそ2×2センチ程度が標準で、わかりやすい目安で言えば一円玉は入るが五百円玉は入らない程度だと思います。

下の図は小耳症手術では他の追随を許さなかった故・永田先生のサイトから引用しました。永田先生が小耳症の肋軟骨フレームを作る際に、仕上がり寸法の目標とする「正常な耳」の寸法とプロポーションが書かれています。やはり縦方向の大きさは6センチと考えておられたことがわかります。

大きい耳は軟骨や皮膚を切り取って小さくできますが、切り取り方によって傷が残ります。自然に一回り小さくするのはなかなか難しい手術になります。

小さい耳を大きくするためには、今ある耳の材料(軟骨と皮膚)を使って一回り大きなフレームを作るため、軟骨の位置をずらしたり、内側の軟骨を切り取って形を変え、外側に移したりする必要があります。皮膚は通常足りないので、耳の裏側の皮膚を動かして表側まで持ってくるか、一部皮膚移植が必要となり、事前に設計図をうまく作っておかないと目的を達成できなくなります。

耳たぶだけを(軟骨を形成しないで)大きくしたり小さくしたりするのは、難易度はやや下がりますが、大きくする場合には材料をどこから持ってくるかが問題となります。詳しくは耳たぶの形を変えるの項をお読みください。

左右の耳の形を揃えたい

小耳症などに伴うものを除き美容的なものは自費になります。原則的に大きな方の耳を小さな方に近づけるほうが簡単です。

軟骨の折れ込み方やカーブが異なるだけの場合は、耳介軟骨形成の考え方で対処できます。
しかし、軟骨や皮膚の量が異なる場合、移植して皮膚や軟骨の量を増やすのは困難を伴います。

極端に小さな耳は小耳症という分類になり、軟骨の移植が必須になります。

小耳症(二次修正)

小耳症は片側の耳介が極端に小さく、痕跡的であったり位置の異常を伴い、外耳道が欠損している場合もあります。程度は様々ですが国内では毎年数百人程度出生しているのではないかと想像されますが、軽症のものは見逃されているかもしれません。通常片側で、両側に発生するのは10万人に一人くらいと稀です。
通常の(やや重症の)タイプではまず自分の肋軟骨を用いた耳介フレームを作成し、耳介の部分に移植します。そのままでは頭に張り付いたような耳になってしまうので、その後二期的に耳起こし(耳介挙上)を行なって耳介の裏側を作成します。

肋軟骨からの軟骨移植を必要とする手術は全身麻酔が必要となり、入院設備のない当院では行えません。耳の形の修正、脱毛、その他の二次的なトラブルは対応可能です。ご相談ください。

片方の耳がやや小さい、折りたたまれている、変形があるなどの軽症の場合は、折り畳まれた軟骨をうまく展開することで不十分ながらある程度の大きさの耳介を作成することができます。様々な事情で入院手術ができない場合などご相談に応じます。
複合的な変形があり一度では改善が難しい場合や、軟骨が溶けてしまっているものの皮膚は余裕がある場合など、様々な特殊例にも対応しています。

耳たぶを大きく・小さくする手術も行っています。

耳たぶ(耳垂)が大きすぎたり小さすぎたりという場合に、皮膚と軟骨の位置をずらして耳の裏から皮膚を耳たぶに付け加えたり、特殊な切開で丸く整えて縫合したりする手術を、耳垂形成手術といいます。

耳たぶを大きくする

小さな耳たぶを大きく術前 大江橋クリニック 小さな耳たぶを大きく術後 大江橋クリニック 小さな耳たぶを大きく術後 大江橋クリニック

生まれつき小さく頬についた耳たぶを、頬から離して少しだけ大きくした一例。頬への移行部がフェイスリフトの術後のように下に引きずられたようになっているのをやや丸く修正した。他院では耳たぶへの脂肪移植やヒアルロン酸の注入、シリコンプロテーゼの移植等を勧められたということだが、耳たぶに異物を入れると感染の可能性からピアスができなくなると言われたため、大江橋クリニックでの手術を希望した。皮弁術を行なって耳の後ろの皮膚を前にずらす方法でやや大きくした。皮膚をずらすことで塞がったピアス穴は後で同じ場所に開け直した。

耳たぶ(耳垂)が大きすぎたり小さすぎたりする場合に、皮膚と軟骨の位置をずらして耳の裏から皮膚を耳たぶに付け加えたり、特殊な切開で丸く整えて縫合したりする場合は、耳垂形成手術となります。

小さい耳たぶはヒアルロン酸などのフィラーを注入することによりある程度大きくすることも可能です。しかし、注入物での拡大には限界があります。またフィラーはあくまで異物ですので感染に弱く、ピアスなどが原因で感染を起こすと切除しない限り炎症が治らないこともあります。大江橋クリニックでは耳たぶへの注入はお勧めしていません。
耳の裏から皮弁を作成して表側にずらすことである程度大きな耳たぶを作れます。

ただし、裏側の欠損を塞ぐため皮膚移植などが必要となることもあります。その場合、裏側の傷はある程度目立ちます。また、体質によっては術後に皮弁が拘縮して徐々に小さくなり、変形してくることもあるので、長期間のフォローが必要です。

耳たぶを小さくする (症例準備中)

単純に切除すると目立つ場所に傷が残ることもあるので、皮膚をずらしてできるだけ裏側から切除するように工夫しています。その場合、裏側の傷はある程度目立ちます。また、体質によっては術後に肥厚性瘢痕やケロイドが発生し変形してくることもあるので、長期間のフォローが必要です。

耳たぶの形を変える (症例準備中)

フェイスリフトなどの美容手術で変形した場合なども、手術によって調整できます。他院の美容手術後の変形を修正したりもしています。

通常は自費の手術です。ただし高度な変形であったり、腫瘍摘出などの手術により欠損や左右左などが生じた場合は保険の範疇で手術できる可能性があります。

先天性耳瘻管は生まれつき耳にある小さな穴で、多くは耳輪の始まり付近に開いた小さな穴(耳前瘻孔)として認められますが、耳の後部(耳後瘻孔)や耳たぶなどに存在することもあります。通常は行き止まり(盲端)になることの多い深い皮膚トンネルで(瘻管)すが、稀には耳の穴(外耳道)の奥の方に繋がっていることもあります。
穴を塞ぐ手術は、大人であれば局所麻酔で対応できます。ただし、穴の壁を残りなく切除するには皮膚を大きく切開する必要があり、通常耳の付け根の前側に数センチの傷跡が残ります(目立つことはあまりないと思います。)過去に感染を起こして何度も腫れたことがある場合は、瘢痕組織が出血しやすく手術操作に時間がかかります。切開範囲は割合大きくなります。皮膚が傷んでいて皮膚ごと摘出しなければならないこともあります。

先天性耳瘻管の二次感染

耳瘻管の中が感染を起こして耳の周囲が赤く腫れて痛む事があります。小学生ぐらいになってたびたび膿が出る、痛むなどのトラブルを起こすことが多く、可能ならば腫れていない時期を選び早めに摘出手術をお勧めします。
重症になると頬や首まで赤みが広がり非常に痛いことがあります。こうした場合まず抗生剤内服で炎症を引かせてから、原因となっている皮膚の管を完全摘出します。

副耳は耳の前方に小さな硬い隆起として生まれつき存在することが多いのですが、稀に顎や首などかなり下の方に発生する場合もあり、こうしたものは「軟骨母斑」などと呼ばれることもあります。いずれも、皮膚の突起の下には小さな耳介軟骨が存在することが多いです。耳に近いものでは本体の耳介軟骨と繋がっていることもあります。
小さなものは「いぼ」と思われていることもあります。赤ちゃんの時に小児科などで外側の皮膚の部分だけを部分切除されていて、軟骨が皮下に小さく飛び出して触ることもあります。

局所麻酔で摘出しますが耳介軟骨とつながっている場合など思ったより時間がかかることがあります。小学生以下では長時間同じ姿勢を保つことが困難で局所麻酔では摘出できず、入院施設のある病院で全身麻酔が必要なことがあります。通常は手術後、耳の前に線状の細い傷が残ります。目立たず気にならない程度で治る場合がほとんどです。

耳のできものや腫れを改善する手術

耳のできもの(耳介腫瘍)には様々なものがありますが、形成外科・美容外科で扱う耳介腫瘍はケロイドと粉瘤が代表的です。この二つの治療方針は大きく異なり、ケロイドの場合、通常は手術後に長期間のケアが必須で、場合により内服薬、注射、装具、放射線治療など様々な治療法を組み合わせる必要があります。

耳介ケロイドの例:右端は他院で切除されて耳たぶがなくなった例

耳介ケロイド術前 大江橋クリニック 耳介ケロイド術前 大江橋クリニック 耳介ケロイド術前 大江橋クリニック 耳介ケロイド術前 大江橋クリニック

ステロイド(ケナコルト)注射はしないでください

形成外科学会・皮膚科学会などでは、耳介のケロイドに対してステロイド注射を勧めており、注射を繰り返した末に大江橋クリニックを受診される患者さんがたくさんいます。ステロイド注射でケロイドが完治することはなく、むしろ中途半端に縮小して正常部分との境界が不明瞭となり、後々手術治療で確実にケロイドを切除することが非常に難しくなり、手術後の再発率が高くなるのでやめていただきたい治療です。上段右端はステロイド注射、不完全な切除、再発を繰り返し耳たぶがなくなってしまった患者さんの例です。それでもまだケロイドが赤く残っています。

耳介ケロイドの多くはピアストラブルに伴って耳垂(耳たぶ)や耳輪(耳の縁)に沿って発生します(ピアスケロイド)。ピアス孔の前後に固くピンク色のできものが盛り上がってきます。その他、外傷ややけどによるものもあります。粉瘤と紛らわしい場合もあり、時には合併することもあります(ケロイドの中心に粉瘤があるなど)。大きなものは梅干し大程度になることもあり、また鉄アレイやひょうたんのように耳を貫通して耳の前後に発育することもあります。

治療は完全摘出です

耳のケロイドは体質的な要因を持った人に、耳に生じた傷が慢性化して治らなかった場合に発生します。治療方針は完全摘出です。ケロイドは再発傾向が非常に強く、完全切除して速やかに治癒させないと再び大きくなります。通常のケロイドは摘出術後に放射線照射が必要とされますが、耳にできたケロイドの場合は適切に切除できれば完治する場合が多いと言われています。ピアスケロイドなどは異物が核となって反応性に発育した腫瘍の性質も併せ持つためだろうと考えられます。

とはいえ、大きなものを完全摘出すると耳たぶの組織が欠損し、そのままでは変形が残ります。
こうした場合は皮弁術などを用いて耳介を再建する必要があります。

症例1:耳垂ケロイド

この男性は海外在住で、初診時には滞在期間が短いため手術せず帰国。1年半後に再診した際に大きさは倍以上に増大し赤みも強くなっていました。ピアスケロイドのため腫瘤は耳の前面にまで達してた。くりぬき切除し単純縫合した。術後の長期経過は不明。

症例2:耳垂ケロイド

欠損が大きくなければ縫い寄せて穴を閉じる事もできる。

症例3:耳垂ケロイド

欠損が大きい場合や単純に縫合すると左右差が大きくなる場合は、何らかの方法で穴をふさがなければならない。
この症例は反対側の耳たぶが比較的大きいので、それに合わせなければならない。耳介後部から作成した皮弁を耳垂の中を通して前方に引き出して再建した。(皮下茎島状皮弁)

症例4:耳垂ケロイド(現在は不適切と考えている方法)

十数年前の症例。この症例はケロイドの硬い腫瘤が皮下に限局しているように見え、表面を覆っている皮膚は赤みがなく、柔らかくてやや厚みがあった。そこでできる限り正常に見える皮膚を温存して、皮膚を薄く剥がし、くり抜くように切除した。

※  最近の研究で、一見正常に見えるケロイド表面の皮膚も、浅いところまでケロイド組織と共通のマーカーの発現が見られることがわかったので、皮膚を残すと再発の可能性が高まると考え、現在では可能な限りケロイドは皮膚ごと切除するようにしています。

レーザー治療が有効なこともあります

大きく盛り上がって目立ってきてから受診されることが多いのですが、そうなった場合は原則的に手術で全切除します。
しかし小さなものはレーザー治療で急速に小さくなることがあります。1回の照射で、数ヶ月かかりましたが徐々に小さくなり完全に消えてしまった例もあります。術後の赤みがなかなk引かない場合もレーザー治療が有効なことがあります(術後の長期フォローと内服治療や圧迫は必須です。)

ケロイド切除手術の注意点

完全摘出できれば再発することは稀ですが、正常部分との境界が曖昧で取りきれずに(特にステロイド注射を受けていた場合)取り残した部分から再発することがあります。再発した場合、しばらく内服療法などで治療した後再手術を行いますが、最近では有効な内服薬が国内では入手できなくなり、従来の治療法を見直す必要に迫られています。
術後放射線治療は効果がありますが、大学病院の放射線科など設備のある大病院でないとできないこと、2週間程度は集中して通院する必要があること、ケロイドの放射線治療に習熟した医師が行わないと線量不足で再発することがあり、そうなった場合に打つ手がないこと(放射線療法は1回限りで2度目はできない)などが問題です。

保険適応上の問題

ケロイド摘出術(特に軟骨面を貫通して裏と表にまたがるケロイド)は切除と再建に技術を要する手術ですが、保険請求すると皮膚皮下腫瘍摘出術という非常に低額の(小さな粉瘤と同程度)手術として算定され、耳の表側と裏側の両方からアプローチする必要があるのに同一部位であるとして複数回の手術とは認められず、耳介腫瘍というもう少し高額の項目があるのに皮下の腫瘤であるとして適用できず、術後に耳介を再建する必要があっても耳介形成術を同時に行うことができず、皮弁術を行っても半額に減額され、と保険では全く採算の合わない手術です。
このため大江橋クリニックではケロイドの切除・再建は自費手術とさせていただきます。

大江橋クリニックでは、両側耳介のケロイドを摘出する場合はまず大きな片側のみを行い、2回目の手術日を他の日に予定させていただくことがあります。予約日は通常1ヶ月程度先になります。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、2週間後以降に病理結果の説明を行います。傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

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耳の粉瘤

「粉瘤(表皮嚢腫、アテローマ、毛包嚢腫、俗に脂肪のかたまり、脂肪腫などと呼ばれることもあります)」は耳にできる腫瘍の中では最もポピュラーなもので、耳垂(耳たぶ)や耳の裏側などに多発することもあります。耳周囲の皮膚もできやすい場所の一つです。
腫れて痛い場合はまず抗生剤などの内服で症状を治めます。小さく切開して排膿させることもあります。切開排膿では完治させる事は難しく、後日本格的な摘出術が必要となります。
手術はできるだけ耳の裏側から(表側に毛穴がある場合は表側から)毛穴の周囲を切開してくり抜くようにカプセルを摘出します。直径1ミリ程度のものまで含めると小さな腫瘍が片耳に数十個多発する方もあり、数カ所〜十数カ所一度に摘出した事もあります。通常は赤みが消えれば気になる変形は残りません。
腫れや痛みがなければ比較的簡単に摘出できますが、多発したものを一度に摘出する場合や極端に大きいもの、耳が変形している場合などは単純な摘出術ではなく皮弁術などやや複雑な手術を行う必要があります。

粉瘤の手術は研修医が最初に執刀させてもらうことも多い手術で、形成外科の日常診療でも毎日のように遭遇するものです。ですから通常の外来手術を担当する形成外科医ならば、一人前になるまでに少なくとも全身にできた粉瘤を数千回は摘出していると思います。それでも普段背中や腹部にできたものばかり手術している医師は皮膚ごと切除することに慣れているため、耳や瞼など皮膚が非常に限られ少しでも切開を小さくし傷を残さないように注意しなければならない部位は苦手なことがあります。耳たぶごと切り取られてしまった患者さんが来られることもあります。

手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、2週間目以降に病理結果の説明を行います。体質により赤みが長引くことがあり、硬い傷痕が数ヶ月持続することもあります。そのような場合はレーザー治療や長期間の内服治療などが必要になることがあります。傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

粉瘤の二次感染

耳の粉瘤

耳たぶの腫れる原因の多くはこれです。もともとあった粉瘤に細菌感染が起こると、数日で赤く腫れ、痛みや排膿を伴うこともあります。
通常はまず抗生剤を内服してもらいますが、皮膚が破れたり排膿している場合は応急の皮膚切開などが必要になります。(皮膚切開術、創傷処置など)

赤く腫れている間は根治的な手術ができません。切開排膿は一時的な効果しかなく、いずれ再発します。

根本的な手術は赤みが治まって腫れが引いてから、しこり全体をきれいに切除します。
腫れたことがなくても、小さなしこりでも、いずれ腫れる可能性があるので切除をお勧めします。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

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生まれつきあることもあれば(先天性色素性母斑)、大人になってから発生することもあります。
盛り上がって目立ってきてから受診されることが多いのですが、盛り上がったものは原則的に手術で切除します。(レーザーは小さなほくろに向いています。大きなものはとりきれずに再発することがあり、傷痕も目立つことがあるのでお勧めしません。)
耳の表面や縁に発生した比較的大きなホクロは、切除するとその部分の皮膚が欠損した状態になり、無理に縫おうとすると耳介が変形します。可能であれば周辺の皮下を軟骨から剥離して皮膚を動かし、変形しないように再建します(皮弁作成術)。耳の裏側の皮膚を皮下トンネルを通して前面に出して縫合することもできます(皮下茎島状皮弁)。それが難しい場合(軟骨の面など)では、裏側の皮膚を切り取って前面に皮膚移植(全層植皮術)することもあります。

ピアストラブルを起こすたびに自分で開け直した複数の近接するピアス穴を閉じる手術をした際に、対耳珠にある盛り上がったホクロ(近くに衛星病巣もある)を同時に切除した。変形を避けるため周辺の皮膚を軟骨から剥がして移動させている。そのためやや窮屈に尖った対耳珠になったが変形は許容範囲で傷跡は目立たない。傷が治ってからもう一度ピアス穴を適切な位置に開け直している。

大江橋クリニックでは、主に平日の午後からの手術時間に予約で治療を行なっています。予約日は通常1ヶ月程度先になります。
手術当日は車の運転、入浴はできません。翌日再診していただき、問題なければ入浴や洗髪は可能になります。
通常1週間後に抜糸、2週間後に病理結果の説明を行います。大きなものを切除した場合などは、変形なく治すためにはテーピングや内服などを含め長期間の通院が必要となることもあります。傷跡が綺麗になってくれば通院は終了となります。

ホクロに似た腫瘍のこともあります

ホクロと同じように見える黒いできものが悪性腫瘍である場合もあります。最初から疑わしい場合はいきなり手術せずに大学病院等をご紹介することもありますが、通常はまず安全圏をとって少し大きめに周りの正常皮膚をつけて切除し、病理検査します。
切り取った部分が大きい場合、通常は他の部分から採取した皮膚を移植して塞ぎます(全層植皮術)。人工皮膚を用いる場合もありますが、この場合は必ず後日再手術が必要となります。
疑わしい場合、安易にレーザー治療や凍結療法などを行わないことが大切です。

軟骨や皮脂腺、その他の皮膚付属器から発生する悪性腫瘍もありますが非常に稀です。当クリニックでは今の所経験がありません。耳の皮膚から発生する悪性腫瘍としては、以下の3種類が比較的頻度が高く、治療経験もあります。

  • 基底細胞癌:比較的多く見られますが悪性度は低く、完全切除できると再発しません。脂漏性角化症やシミ、いぼと誤認されることが多いできものです。
    通常は良性腫瘍として摘出後に、病理検査で診断されることが多く、従って手術料等は普通の良性のできものをとる場合と同じです。
    但し悪性と判断された場合、術後長期の経過観察が必要となります。必要に応じて他の施設(大学病院など)をご紹介することがあります。再手術が必要となることもあります。
  • 有棘細胞癌:これも上記とよく似ていますが、少し悪性度が高くリンパ節転移などが見られることがあります。切除する場合、周囲を広く大きく深く摘出する必要があります。進行度によっては化学療法など他の治療も必要になることがあり、全身検索のため多くは大学病院へのご紹介になります。
    最初から悪性を疑う場合は、手術に踏み切る前に専門施設をご紹介することが多いです。
  • 悪性黒色腫:小さいうちから遠隔転移などが見られる悪性度の高い腫瘍です。完全切除できたと思われても長期フォローが必須なため、このがんを強く疑う場合は、通常は最初から専門施設をご紹介しています。

耳の皮膚がんの例:左耳介後面の基底細胞癌です。周囲を広めに切除し、局所皮弁で再建しています。経過は順調でメガネも普通にかけられます。古い写真をコピーしたもので一部色が飛んでいますが、イメージは伝わると思います。私が執刀した耳の皮膚がんの第一例目で30年近く前のものです。

耳の皮膚がんの例:これも同じ頃に勤務先の病院で手術した右耳介後面の有棘細胞癌です。周囲を広めに切除し、軟骨も一部切除して局所皮弁で再建しています。耳の形を保つため耳輪軟骨の一部を細く残し、腫瘍直下の軟骨の内側をくり抜いています。耳輪軟骨の弾力のため皮弁の緊張が強く一部壊死しましたが徐々に回復しました。皮弁採取部は上腕内側からの全層植皮で覆いました。古い写真をコピーしたもので一部色が飛んでいますが、イメージは伝わると思います。

同じ症例の耳を横から見たものです。周囲の皮膚を広めに切除していることがわかります。皮弁で再建していますが、切除時に耳輪の軟骨を残してその上に皮弁を被せたため、縫合後には軟骨の弾力で皮膚に緊張がかかりましたが、軟骨の復元力のおかげで徐々に皮膚が伸びて形は改善していきました。
この症例は病院勤務時代のもので、術後には頸部リンパ節の予防的放射線照射も行っています。現在なら転移の有無を正確に評価するため大きな病院を紹介すべき症例です。

耳(外耳、耳介)にできものを見つけたら、レーザー治療などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳のできもの(腫瘍)や先天異常に保険は適用されるか

耳にできたできものやケロイドを切り取ったり、その欠損を再建する場合や、副耳や耳瘻管などを手術する場合は保険の対象となります。

皮膚科的な耳(外耳)のトラブル

イメージ写真:新緑

できものの多くは粉瘤(表皮嚢腫・毛包嚢腫)です

耳の粉瘤

赤く腫れてケロイドのように見えるが、ぶよぶよと柔らかく、内部に膿を持っています。切開すると大量の膿が出て縮小します。

急に腫れてくる痛いできものの多くは、耳たぶなどに以前からあった小さなしこりが急に感染を起こして大きくなったものです。切開が必要なほど化膿している場合は少なく、ひとまず抗生剤と消炎鎮痛剤を内服してもらうと収まるものが大半です。(背中、お尻などでは放置して大きく腫れ、その場で切開が必要な場合が多いです)

粉瘤でない場合やピアストラブルなどに合併した場合は切開排膿やピアス穴にシリコンチューブを通すなど何らかの処置が必要となることがあります。多くは局所麻酔までは必要ありませんが、治るまで日数を要することがあります。

耳のケロイド

こちらはピアスホールから発生したケロイド。内部は硬く、通常圧迫しなければあまり痛みはありません。前後に貫通して雪だるまや鉄アレイ、瓢箪型になることが多く、切除する場合は全切除しないと再発します。

ピアスホールにできたケロイド(赤く盛り上がって硬いできもの)が痛む場合は、切除しないと症状が改善しないこともあります。ピアスケロイドは正しい処置をしないと再発を繰り返して大きくなり、切除しても耳の変形を残すことがあり、難しい治療になってしまいます。

耳介のケロイドは全切除が基本です。注射で治そうとする医師がいますが、かえって難治性になることもあり、手術しても治らなくなることすらあります。逆に残さず切り取れば再発しないものが大半です。詳しくは下の「耳のケロイド」の欄をご覧ください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳の粉瘤

元からあった小さなできものなどが腫れた場合

元々耳たぶ周囲にあったたくさんの小さなしこりが腫れて融合したもの
 
耳にできた痛いできものの項を参照してください。耳垂(耳たぶ)にあった小さなしこり(粉瘤、表皮嚢腫等と呼ばれるものです)が腫れることが多いですが、生まれつきある耳前瘻孔などが化膿したり、ピアスホールなどが感染を起こしたりすることも稀ではありません。
ピアストラブルで発生したケロイドが比較的短期間に大きくなることもあります。

基本的には膿を持っているものは切開して排膿し、抗生剤などの内服で治療します。外用剤(塗り薬)だけで治癒することは稀です。赤く腫れている間は全摘出はできないので、一度腫れが治ってから、再発防止のために手術で摘出する方針をとることが多いです。
大きなできものをとった場合、耳介の変形を防ぐために皮弁術などの形成外科的手術を併用したり、後日耳の形を再建する必要が生じることもあります。

下の「耳の粉瘤」の項も併せてお読みください。

スポーツ外傷や打撲などによって突然腫れて痛い場合

柔道耳

下の「耳介血腫・耳介偽嚢腫」「いわゆる柔道耳」の項もお読みください。

ヘルメットをかぶっての作業中に肩に担いだ資材の一部が耳に当たり膨らんできたもの。本サイトのトップページにも治療後の写真を載せています。
 
多くは強く耳を打つなどのきっかけがはっきりしていますが、アトピー性皮膚炎などで耳を掻いていたら腫れてくることなどもあり、原因がはっきりしないものもあります。(その多くは耳介偽嚢腫ではないかと思われます)

受傷後数日以内であれば、中に溜まった血液を抜いた後に圧迫固定を長期間(通常2週間以上)続けることで出血が止まり変形を防ぐことができます。
ただし圧迫には麻酔注射をして糸でガーゼやスポンジを縫合するなどの必要があり、外来時間中に簡単にできることは少ないので、多くの場合そうした処置は行われず、すぐに再発します。

大抵の場合耳の上部の縁のあたりから痛みを伴って膨らみ、耳介血腫として耳鼻科等で血を抜いてもらって一旦小さくなったがまた再発したという方が多いです。血ではなくリンパ液の溜まった耳介偽嚢腫の場合は、痛みが特にないのにいつの間にか腫れてくるので注意が必要です。

柔道耳

この状態で長年放置され、軟骨が増えて硬い塊になったものがいわゆる柔道耳(保険病名:花キャベツ状耳、カリフラワー耳)と呼ばれる状態です。体質によってなりやすい人があります。
スポーツに起因するものは、そのスポーツの名称をとって、柔道耳のほか「レスラー耳」「力士耳」「ラグビー耳」などと呼ばれたり、形の印象から「餃子耳」などと呼ばれたりもします。
一般に3週間以上たったものは圧迫等では改善しないため手術が必要とされています。

全体がむくんだように腫れてきた場合

耳介の浮腫は皮膚炎やアレルギーに伴って起こる場合があります。原因はさまざまですが、ステロイド等を含む比較的強力な内服治療が必要なことが多いです。上の「耳の皮膚炎」の項もお読みください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳のイボやシミ、脂漏性角化症

耳のいぼ

アトピー性皮膚炎に伴って耳甲介の中に生じたイボ(脂漏性角化症)

基本的には耳介皮膚表面のできものは形なりに全切除して病理組織検査を行った方が良いと思います。露出部であり日焼け止めなども塗らない部位なので、光老化の好発部位であり、時に皮膚癌の一種と紛らわしいイボや日光角化症(光線角化症)など前癌状態と呼ばれるできものができたりします。

小さなイボは尋常性疣贅など診断がはっきりしていればレーザー治療(自費 1箇所あたり税抜3,000円〜5,000円程度)でとってしまうことができます。
稗粒腫(1ミリ程度の小さな白いできもの)などは診察室で小さく切開して圧出処置することもあります。

レーザー治療をお勧めしています。凍結療法は一度で取りきれないことが多く、現在行っていません。

日焼けによる炎症後の花弁状色素斑(いわゆる老人性のシミ)など、シミ用のレーザー(自費)で治療できる場合もありますが、耳のシミと思われているものの多くは脂漏性角化症などイボに近い少し盛り上がったものです。時には一部が「皮角」として硬く薔薇のとげのように突き出してくることもあります。
レーザーで削り取る方法がありますが、盛り上がりの強いものは悪性化を疑って切除する方が無難です(特に高齢の方)。大きく切除した場合、欠損を塞ぐために植皮(皮膚移植)や皮弁作成術が合わせて必要になることがあります。

悪性腫瘍(皮膚癌)のこともあります

脂漏性角化症とよく似た悪性腫瘍には、有棘細胞癌・基底細胞癌等があります。
脂漏性角化症はシミのように大きく広がることもありますが、イボ状に褐色のやや硬いできものとして多発することがあります。その中の一部が皮膚癌の一種(有棘細胞癌や基底細胞癌)となったり、最初から癌としてシミやイボのような形で発生することもあります。
良性と判断してレーザー治療等を行っても再発する場合は、その時点で悪性を疑って手術をお勧めすることがあります。詳しくは下の耳の皮膚癌の項を参照してください。

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

ピアストラブル(かぶれや痛みなど)なども扱います。

金属アレルギーであることは少ない

ピアストラブル

ピアス用消毒剤によるかぶれの例

イアリングやピアスなど耳につける装身具によるかぶれやトラブルの多い場所です。耳たぶがピアスやイアリングでかぶれて赤くなり、じくじくしてきても、金属アレルギーとは限りません。
装着時の角度などでピアスホール内に小さな傷がつき細菌感染を起こしていたり、キャッチの締めすぎによる鬱血が引き金になるなどさまざまな原因が考えられます。

ピアスを装着するときのちょっとした注意点や習慣を守るだけで、問題なくピアスをつけ続けることが可能な場合もあります。まずは診察を受けてみてください。

ピアストラブルの軽度のもの(ピアス穴から膿が出る、穴の周囲が腫れて痛い、ピアスが通らないなど)は内服薬(抗生剤や消炎剤)と皮膚科的処置(シリコンチューブ留置や洗浄、軟膏処置など)で治まることもあります。
不良肉芽が生じたり、ピアスホールが裂け、ちぎれてしまったものなどは、手術が必要となります。ピアスによる耳切れを参照してください。

消毒せずによく洗う

ファーストピアスを開けた時に医療機関などでもらった消毒液を捨てずにとっておき、トラブルのたびにつけるという方がいます。消毒液は基本的に処方されてしばらく使用したら残っていても捨ててください。血液や体液などの混入により殺菌効果がなくなったり、雑菌が繁殖したりして逆効果になっていることがあります。

トラブルが生じたら水道水など流水のシャワーで患部をよく洗い流してください。細菌やかぶれの成分を含む体液などは洗い流すことで減少させることができます。
瘡蓋や固まった体液、細菌が作るバイオフィルムなどが治癒を妨げていることがあり、洗浄するだけで症状が改善することが多いです。

ピアストラブルは市販の塗り薬などを試す前に、まず皮膚科の診察を受けてください。ファーストピアス装着後のトラブルは、必ず処置を受けた医療機関にご相談ください。

耳の皮膚炎は治りにくい

耳の皮膚炎

アトピー性皮膚炎に伴う耳の皮膚炎の例
 
耳(外耳、耳介)は顔の両側にあって頭髪に覆われている場合もあり、頭の両側に突き出しているという位置と形の特性から、日常的に刺激を受けやすく、皮膚炎にいったんなると治るまでに時間がかかります。
耳の皮膚炎には次のような特徴があります。

  • 日光の紫外線による皮膚炎(急性の日焼けや慢性の皮膚の変化)が起こりやすい
  • 髪につける整髪料やシャンプーなどによる慢性の皮膚炎が起こりやすい
  • 毛染めの染料などによるかぶれが起こりやすい
    頭皮に症状があまりなく、生え際や耳だけがかぶれることもある
  • メガネやマスクのゴムなど耳にかけるものの素材によるかぶれが起こりやすい
  • イアリングやピアスなど耳につける装身具によるかぶれやトラブルが多い
    金属アレルギーのこともあれば、調子が悪いのに無理にピアスを使用したり、重すぎるピアスの常用やキャッチの締めすぎなどによる機械的刺激による場合もある
    ピアストラブル参照
  • 花粉症などによる季節的な皮膚炎が、特に外耳道(耳のあな)に生じることがある
  • 頭皮と連続して起こる皮膚炎や感染症が耳に及ぶことがある
  • 耳の水虫は痒くないこともあるので意外に気づかない
  • 耳かきなどの刺激や細かい傷に起因する外耳道の皮膚炎でかゆみを生じることがある
  • 耳にヘルペスや帯状疱疹ができることがある
    水疱ができ痛みを伴うことが多いが、診断がつかずに重症化すると顔面神経麻痺などを引き起こすこともある

耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。

耳の皮膚炎の治療のポイント

  • 思いがけないものが原因物質となっていることがあるので、まずは思いつく限りのものはいったん中止します。
  • 毛染め剤などの他、使い慣れたシャンプー、ヘアスプレーなども原因になり得ます。特に長い間日常的に使用していたものが繰り返した刺激によってアレルギーの原因となる場合は、気づきにくいため使用を中止せず、なかなか治らないことがあります。
  • 原因を探るため皮膚の一部を軽く削って調べたり、アレルギーの「血液検査」をすることもあります。ただし血液検査ではっきりと結果の出るものはそれほど多くありません。実際に使っている毛染め剤などによるパッチテストが必要なことがあります。
  • パッチテストは現在のところ当院では行なっていませんが、信頼のおける医療機関をご紹介しています。パッチテストでは、どのような症状が出たら陽性と判断するか、の経験と技量が重要です。同じ症状を別の医師が判定すると結果が異なることもあります。
  • 原因物質が分かれば避け、消炎や保湿のために外用剤を使用します。内服が必要なこともあります。症状の出方によっては、他の病院などの専門施設(皮膚科、耳鼻科、その他)をご紹介することもあります。

耳の接触性皮膚炎

刺激物質またはアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)によって、耳の皮膚が炎症を起こし、水疱ができたり赤くただれたりします。
頭皮や髪につけたものによって、頭の中にはかゆみがないのに耳だけかぶれることもあります。
原因物質との接触を避けないと、繰り返し症状が起こり、徐々に重症化することがあります。

治療法は原則的に体や顔の皮膚炎とほぼ同じですが、耳の特性上治りにくいことがあります。

ほとんどの皮膚炎は塗り薬と内服薬で治療しますが、外科的な処置や皮膚をこすったり切り取ったりする検査が必要な場合もあります。

耳のアトピー性皮膚炎

耳のアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の症状の一つとして耳に治りにくい皮膚炎が続くことがあります。
写真は耳の穴の中にも赤みが広がり、痒みのある状態です。真菌感染を起こしていることもあるので皮膚を擦って調べる検査も必要です。

  • 慢性化すると皮膚が厚くなり、黒ずんでくることもあります。
  • 短期間で治癒する病気ではないので、同じ医師の下で長く治療を継続する事が最も大切です。
  • アレルギーの血液検査などで原因を探りますが、症状とは必ずしも一致ないことがあります。
  • 季節性があるので、悪くなる時期を把握しましょう。
  • のみ薬などがあっていないと思ったら、勝手に中止したり、医師を変えたりせず、処方した医師に必ず相談する事。
  • 転医するときは、今までの治療法などを書いた紹介状をもらう事。

耳の脂漏性皮膚炎

頭部や生え際など耳の近くの皮膚が慢性の炎症を起こし、水疱ができたり赤くただれたりします。
毛穴に常在する真菌などが皮脂を分解し、炎症物質を作り出すのではないかと考えられています。

  • 体質的なものといってもよく根気よく治療を続ける必要があります。
  • シャンプーや髪の洗い方などを工夫することで改善することもあります。
  • アレルギーの「血液検査」などは必ずしも有効ではありません。
  • 基本的には炎症をおさめる外用剤での治療が中心となります。

耳の水虫

治りにくい慢性皮膚炎だと思って市販の外用薬などを付けていたが、実は水虫菌がついていた、という場合もあります。
身体の他の部位にあったものがうつることもあります。耳の穴の周囲などの赤いかぶれは要注意です。

  • 診断をしっかりつけることが大切です。皮膚科専門医の検査を受けましょう。
  • 赤みやかゆみは徐々に改善しますが、比較的治療に時間がかかります。
  • 身体の他の部位にもできていることがあるので診察を受けましょう。

ピアス関連のご相談

ピアスを開ける際の位置ぎめのご相談などもしています。耳は左右対称でないことも多く、他人から見たときに綺麗に見える位置は自分で鏡を見た時とは違っていることもあります。

ピアスの似合う位置は耳の形や耳たぶの厚さだけでなく、顔立ちや服装の好みによっても変わってきます。
将来2個目を開けるのか、長く下がって揺れるピアスが良いのか、一粒ダイヤしかつけないのか。
そうしたこともご相談しながら、開ける位置を決めます。