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眼瞼下垂症について
〜 about Blephaloptosis 〜

大江橋クリニックは眼瞼下垂症の手術に力を入れています。
いわゆる眼瞼下垂(原因を問わず瞼の下がった状態)と
「眼瞼下垂症」(上眼瞼挙筋の機能不全)という病気とは厳密には違います。
眼瞼下垂症手術は健康保険の対象になっていますが、
保険を適応して手術するにはきちんとした診断が必要です。


以下のページも参考視してみてください。

診断をつける

「眼瞼下垂」という言葉は近年大変ポピュラーになり、瞼の美容について関心がある方なら知らない人がいないくらいになってきました。また多くの美容外科や形成外科、あるいは眼科で「眼瞼下垂の手術」が気軽に行われるようになっています。
一方で「眼瞼下垂症」をきちんと診断できている医療機関は決して多くはありません。多くの医療機関で、診断があいまいまなまま、あるいは全く診断をつけずに患者さんの希望に従って、様々な「眼瞼下垂」の手術が行われており、不幸な結果に苦しんでいる患者さんがたくさんいます。

大江橋クリニックで行っている眼瞼下垂症の治療についてお話しする前に、一般的には「眼瞼下垂」という言葉がどのように理解されているか、Googleを使って少し調べてみましょう。

Google検索で「眼瞼下垂とは」と調べてみる

皆さんそれぞれの環境で結果は異なるでしょうが、大江橋クリニックの院長が自分のふだん使っているコンピュータで「眼瞼下垂とは」と調べてみると、こんな結果が出ました。

2022/08/17 Google検索「眼瞼下垂とは」の1ページ目

ptosis

トップに表示されたのは、日本形成外科学会が「一般の方へ」と題して形成外科で扱う様々な疾患を解説したページでした。

先天性眼瞼下垂 - 日本形成外科学会

眼瞼下垂は上まぶたが十分に開けられず、まっすぐ前を見たときに上まぶたが黒目を被っている状態をいいます。 生まれつき認められる場合を先天性眼瞼下垂といいます。 原因としては生まれつき眼瞼挙筋(がんけんきょきん)というまぶたを挙げる筋肉の力が弱かったり、まぶたを挙げる筋肉を支配している神経に不都合があることが考えられます。

ご覧のように、ここで解説されているのは「先天性眼瞼下垂」であり、「生まれつきの病気」としての眼瞼下垂症です。しかしこのページをご覧になっているほとんどの方は、これには当てはまらないはずです。先天性の病気であれば、子供のうちに小児科の先生が気づき、治療されているはずだからです。
では「先天性ではない」眼瞼下垂は形成外科では扱わないのでしょうか?
実はちゃんと書いてあります。形成外科学会のページの左の欄にあるメニューのうち「その他」をクリックしてみると「加齢性眼瞼下垂」という項目が現れます。
形成外科学会では、大人の眼瞼下垂症は「変性(加齢)疾患」として「その他」に分類されています。老人性の変化ということです。

では、美容外科などで一番たくさん手術が行われていると思われる「老人ではない」若い人の眼瞼下垂は一体どうなったのでしょう?
何も書かれていません。また上記2項目の記述も、実は誤解を招きやすい不十分なものだと思います。Googleは検索アルゴリズムを変えて学会や大きな病院などの「権威筋」の記述を最初に表示するようになったのですが、学会や大きな病院のサイトだからといってきちんとわかりやすく書かれているわけではありません。
ではもう少し下の方の項目も読んでみましょう。

日本眼科医会の記述

眼瞼下垂に悩むかたへ | 目についての健康情報 と書かれています。
日本眼科医会とは日本眼科学会とは違うのですが、全国の眼科の医師で構成される団体ですからこれも一定の権威があります。
ここで文章を書かれているのは愛知医科大学眼科教授の柿𥔎裕彦先生です。医師向けの眼瞼下垂症の教科書も書かれていて、形成外科とは違った見方で眼瞼下垂の治療をされています。
このページにはそのものずばり「眼瞼下垂とは?」という項目があり、先生は眼瞼下垂を3つに分類されています。
1. 生まれつきの眼瞼下垂 2. 大人になってからなる眼瞼下垂 3. 偽眼瞼下垂
ここでは大人の眼瞼下垂が「加齢性」(老人性)ではなく「大人になってからなる」と広く解釈されています。これなら自分の症状に当てはまるかもしれません。

ところがここに、3つ目として偽眼瞼下垂という分類が登場しました。
眼瞼下垂の分類は3つと書いてあるのですが、3番目は「偽」ですから、本当は眼瞼下垂ではないはずです。これは変ですね。
一見眼瞼下垂にみえるけれどもまぶたを上げる筋肉や腱には異状のないものをそう呼ぶ、とのことなので、筋肉や腱に異状のない場合は実は眼瞼下垂ではないのです。

つまり眼瞼下垂症とは、瞼を持ち上げる筋肉や腱の異常だ、と言うことになります。
柿𥔎先生はご自身の著書の中で、眼瞼下垂症ではない(偽眼瞼下垂の)患者さんには健康保険を適応した手術をすべきでない、保険を使うのは違法だ、と書いておられますから、この区別は非常に重要なはずです。

ちょっと難しい記述も出てきます

3番目は松山市民病院の形成外科のページです。
疾患の説明「眼瞼下垂(がんけんかすい)とは?眼瞼下垂症とは?」というページです。
松山市民病院形成外科で眼瞼下垂外来を担当する手塚敬先生は、信州大学の松尾先生(眼瞼下垂という言葉をマスコミを通じて世間一般に広めた有名な先生です)の薫陶を受け、信州大学式(というより松尾式)の考え方によって治療を行なっている先生なので、形成外科的な(というより松尾先生的な)理論が細かく書かれています。
先生の分類に従えば、眼瞼下垂にはまず先天的なもの(筋肉や神経に異常がある狭義の眼瞼下垂と異常がない腱膜性のものを含む)と、後天性のもの(=腱膜性眼瞼下垂)とがあり、その他の原因も加えて7項目に分類されています。ここで注意しなければならないのは、先生が「眼瞼下垂(状態)」と「眼瞼下垂症(病気)」とを区別していることです。眼瞼下垂状態であっても、不快な自律神経症状がないならば眼瞼下垂症ではないことになり、診断基準は見た目や筋肉の動きなど客観的なものではなく、患者さんの訴えという主観的なものということになります。
ですから「眼瞼下垂症の診断には明確な基準はありません。担当科、担当医師によって判断基準が違います。」と書いておられます。これは困りました。先生の意見では、医師が「この症状は眼瞼下垂症によるものだ」と考えれば患者さんは眼瞼下垂症だということになり、確かに都合は良いが、科学的・医学的ではありません。以下に詳しく述べられている説明も、あくまで先生のお考えであって理論的に証明されたものではないことになります。これでは手術後に改善するかどうかもやってみなければわからないことになりはしないでしょうか。大江橋クリニックにも独自の診断基準はありますが、ここまで言い切るのは勇気がいります。
まあ、仕方がないので読み進めます。
先生のお考えによれば、わたしたちの多くは10歳にもなれば眼瞼下垂(状態)になっていて、ただその症状が出るか(眼瞼下垂「症」になるか)どうかだけだ、ということになります。また、眼瞼痙攣や開瞼失行など他の疾患も眼瞼下垂の仲間に入れられています。これらは一般的には症状も治療法も眼瞼下垂症とは異なると考えられています。手塚先生は実績のある立派な先生ですが、ここでの記述は必ずしも一般的なものではなく、わかりやすいとも言えないと思います。ただ、形成外科系の(特に信州大学系の)先生にはこうした考えの信奉者が多いので、参考にはなります。

Googleなどで検索してみる方にとって、こうした上位に掲載されているサイトの記述は分かりにくく、結局画像検索して「似たような写真」をたくさんみて判断したり、いくつかのサイトにあるイラストを見て判断するしかないのではないかと思います。しかし、自分が当てはまるかどうかを正確に判断するのは難しく、「眼瞼下垂=瞼が下がる」と言っても、瞼の「どこが」「どの程度」「どうした状態の時に」下がるのかは診断経験の豊富な医師でないとわからないことがあります。誰が言っているのか、もとても大切です。上記のように眼科の医師と形成外科の医師では診断基準が違ったりもします。まず診察を受けること、それも1箇所でなくいくつかの施設で診てもらって、一番しっくりくるところで治療を受けるべきです。

ひと目見てわかるほど重症な方もいますが、そうした方の多くは先天性であるか、高齢です。ほとんどの方は自分が眼瞼下垂であるかはっきりと断言はできないと思います。きちんと診察を受け、自分に合った治療法を提案してくれる医師を選んでください。

自分が眼瞼下垂かもしれないと思ったら、まず診察を受けてきちんと診断をつけましょう。

瞼が重い ≠ 眼瞼下垂
目が細い ≠ 眼瞼下垂

瞼が重い、目が開けにくい、といった理由で大江橋クリニックにおいでになる患者さんの7〜8割は眼瞼下垂ではありません。きちんと診察を受けずに自己判断で眼瞼下垂と思い込むのは危険です。
眼瞼挙筋の機能を評価したり、他の病気の可能性を除外したり(鑑別診断)せずに、ちらっと見ただけで誰にでも眼瞼下垂の手術を勧める医療機関もあるようなので注意が必要です。

診察の結果、眼瞼下垂でなく他の病気を疑う場合、大江橋クリニックでは然るべき専門施設をご紹介しています。
診察の結果病的な異常がなく、美容的な手術をお勧めする場合には、一旦家に帰ってご家族と相談するなど、一度冷静に医師の説明をご自身で再確認する時間をとっていただいています。いきなり手術予約を強要することはありません。
初診のみで終了した場合の診察料は5,500円です。

保険適用の手術が可能との診断がついた場合は次回診察から保険診療に切り替え、改めて保険診療の初診として扱います。

まず診察を受けてください。わかりやすい説明を心がけています。

予約の取り方

医療は、まずきちんと診断し、それに基づいて治療計画を立てることが基本です。ところが通常「病気ではない」患者さんを対象としている美容外科では「診断」がはっきりしないまま患者さんの希望に沿って、本来病気を治療するはずの手術が安易に行われてしまうことがあります。

病因や病態を見極めることなく気軽に「眼瞼下垂症手術=瞼をぱっちりさせる手術」と考えて行うことは、時には危険を伴います。手術をしても意味がなかったり、してはいけない場合もあります。

美容外科医による眼瞼下垂症手術を否定するわけではありません。技術的に非常に綺麗な手術をする医師もいます。しかし、一般的に診断の部分が甘いため綺麗な結果が出ない場合も多いという印象を持っています。

病因や病態を見極めることなく気軽に「瞼を上げる手術」を行うことは、時には危険を伴います。手術をしても意味がなかったり、してはいけない場合もあります。

眼瞼下垂症の診察の流れ(初診時)

眼瞼下垂の診察には時間がかかります。できるだけお早めの時間帯にご予約いただいた方が比較的ゆったりと診察を受けていただけます。遅い時間においでいただいた場合、診察時間がずれ込んだり検査や予約を当日にお受けできないことがあります。

  • 眼瞼下垂用問診票にできるだけ詳しく情報を記入していただきます。
  • 診察室でお話を伺うとともに、症状を詳しく診察します。
  • 場合により、瞼の写真を撮ったり、瞼のサイズを計測します。
  • 手術適応か、保険適用できる症状か、他の病気を疑うか、などを説明します。
  • 子供の頃はどうでしたか?家族に同じ症状の方はいますか?(家族性・遺伝性)
  • 何年ぐらい前から気になってきましたか?(発症の時期と進行速度)
  • 最近写した写真の写り方はどうですか?(鏡を見る事によるフィードバック)
  • 朝と夜では症状の違いがありますか?(疲労や筋無力症の評価)
  • コンタクトレンズは使用していますか? 何年ぐらい使っていますか?
  • 花粉症やアトピー、瞼のかぶれなどの症状はありますか?(機械的刺激)
  • アイプチは使用していますか? マスカラはどうですか?(機械的刺激)
  • 重瞼(ふたえまぶた)を含め眼や瞼の手術を受けたことはありますか?
  • 視力はどれくらいですか? 左右差はありますか?(廃用性の下垂)
  • 肩こりや頭痛などの自覚症状はありますか?(自律神経症状の程度)
  • まぶたのマッサージなど、強く擦っていませんか?(機械的刺激) 等々
  • コンタクトレンズは外してください
  • アイプチなどのテープは外してください
  • マスカラやつけまつげは外してください
  • 濃いアイシャドウはつけないでください
  • 額が見えるような髪型で診察を受けてください
  • 子供の頃の写真、数年前の写真等が参考になることがあります

眼科的な病気を除外しておくことは重要だと思います。ただ、眼科の先生でも瞼を専門にしていない場合は「眼瞼下垂症」の診断をつけることは難しいと思いますし、医師によっては重症でない限り手術をすることに反対されることもあります。眼科の先生に「眼瞼下垂ですか」と聞くことを薦めているのではありません。
アレルギー性の眼瞼炎やドライアイの有無、あるいはコンタクトレンズによる角膜の傷や汚れ、涙の流れやすさ、視力の左右差、眼圧や白内障の程度など、一般的な眼科の診察を受けてトラブルを解消しておくことが重要だと思います。

例えば下に示した症例では、眼瞼下垂の手術の前に翼状片の治療(切除)や結膜充血の改善が得られていれば、手術回数を減らすことができたかもしれません。

眼瞼下垂症の中では最も多い、加齢性の変性疾患としての腱膜性眼瞼下垂症。皮膚の余剰も多く、大量に切除する必要があります。
右目は初回手術で十分な改善が見られなかったため、約10ヶ月の間を置いて手術を2回しています。右の術後写真は、2回目の手術から約3ヶ月後です。ぱっちりと開いていませんが、それには理由があります。

(左:1回目術後1ヶ月)実は、1回目の手術の際右の角膜には翼状片という異常があり、ぱっちり開けすぎるとそれが見えてしまい、また白眼の血管が拡張しているため白眼が見えすぎると見た目が悪いのです。そのため、皮膚切除の幅を9ミリにとどめ、少し控え目の手術にしました。左の方もそれに揃えるため開けすぎない様にしました。それでも上方視野が改善したため眉が下がり、目力がアップしてきました。
その後眼科での治療も進み翼状片も改善し、初回の眼瞼下垂症手術の影響で乱視も改善して、ソフトコンタクトでも矯正できるようになるなど様々な良い方向への変化がありました。これならさらに改善がはかれるのではないかと10ヶ月後に再手術を計画し、さらに皮膚を3ミリ切り足すとともに眼瞼挙筋の前転も強化し、最終的にこのようなな結果になりました。(右:2回目術後3ヶ月)
さらにある程度時間が経てば(もう半年くらい?)もう少し皮膚を切り足したり、下眼瞼のたるみ取りを美容的に行って更なる改善がはかれるのですが、美容的な手術は希望されず治療終了となりました。

眼瞼下垂症の診断

基本的には瞼の動きを見て診断します

 眼瞼下垂の診断法として、目薬を差したり、瞼におもりを貼付けたり、心理テストを行ったりする医療機関もありますが、大江橋クリニックでは原則的に臨床症状と瞼の動きをもとにして診断します。自覚症状も参考にしますが、ご本人の「眼瞼下垂です」という訴えのみで病名をつけることはありません。

自己診断は危険です

最近は「私は眼瞼下垂です」とご自身で病名を決めてこられる方も多くなりましたが、他の医療施設で診断を受けている場合でも、参考にはしますが実際に診察の上総合的に判断させていただきます。(診断がつきにくい場合や、他の眼科的、神経内科的な病気が疑われる場合は、それぞれ専門の眼科医等をご紹介し、受診していただきます。)

眼瞼挙筋の動きを計測します

最も大切と考えているのは、眼瞼挙筋の機能(下方視と上方視との動きの差)と前頭筋の機能(眉の動き)ですが、その他上下の瞼の形態や眼輪筋の動きなども参考にしますので、診察時には瞬きをしたり上や下を見たり強く目をつぶってぱっと開いたりというようないろいろな動きを何度もしていただきます。
また、物差しを当てて手術に必要な各部位の計測をさせていただきます。

  • 正面視の際の左右差(斜視の有無や眼球そのものの位置も参考にします)
  • 上眼瞼の下縁(まつげの生え際)が角膜に被さる量(狭義の眼瞼下垂の評価)
  • 眉の位置(特に眉骨との位置関係)と額の皺の程度(前頭筋の評価)
  • 眉と睫毛の生え際の距離(皮膚が伸びているかどうか)
  • 重瞼ラインの位置と深さ(腱膜の下端が後退しているか)
  • 瞼の上、眉の下の陥凹の程度(外眼筋全体の緊張の程度)
  • 下眼瞼のふくらみの程度と開瞼で増強するかどうか(懸垂靭帯のゆるみ)
  • 角膜下縁と下眼瞼上縁の距離(いわゆる三白眼の程度:下眼瞼の下垂の有無)
  • 上方視したときに瞳孔が隠れる程度(上直筋と眼瞼挙筋の関係)
  • まばたきの頻度、眼瞼けいれんの有無(自律神経の緊張の評価)
  • 瞼の皮膚の厚さや硬さ、脂肪の量、涙腺の位置(物理的な重量) 等々
  1. 眉の挙上と額の皺が、特に症状の強い側に目立つ
  2. 眉と睫毛の生え際の距離が広くなり、やや眠そうな表情になる
  3. 瞼の上、眉の下がくぼみ、特に開瞼したときに陥凹が目立つ
  4. 疲れやすく、眼を閉じていると楽なので、起きていても眼を閉じてしまう
  5. 下眼瞼のふくらみが開瞼で増強し、そこを軽く押すと上眼瞼がわずかに膨らむ
  6. 重瞼ラインが乱れ、重瞼幅が広くなったり消失したりする
  7. やや顎をあげてものを見るようになり、猫背になる。肩こりが日常的に起こる
  8. 自転車や自動車の運転中、信号が見えにくくなり、車間を空けるようになる
  9. 空が暗く感じられ、ややうつになる
  10. 首の顎の下に縦に2本の襞が出現することがある

眼瞼下垂症は、非常にまれではありますが「重症筋無力症」という全身性の疾患の初発症状として(あるいは瞼だけに症状の現れる「眼筋型」筋無力症として)現れてくる場合があります(発症率は5/100,000程度)。
女性では30歳代、男性では50歳代の発症が多いといわれます。この病気を疑った場合、特別な血液検査で判定がつくこともあります(健康保険適応)。
通常の術前検査には含まれていませんが、疑いがあればご説明の上で検査項目に追加します。

形成外科においては眼瞼下垂をより広範な病態としてとらえ、一見瞼があまり下がっていなくても、このページに述べられているような症状が揃い、その原因が眼瞼挙筋の機能にあると診断できれば眼瞼下垂であると考えます。この場合、瞼が見た目であまり下がっていないのは、眼瞼挙筋の機能を周辺にあるその他の筋肉が肩代わりし「代償している」と考えるわけです。

代償されていれば視機能は一応保たれているのだから手術の必要がない、という考え方も成り立ちますが、この場合、眼瞼周辺の筋肉の緊張が高まり、その結果として疲労感、肩こり、頭痛、抑うつ感などが出現し、患者さん本人は非常に辛い思いをします。手術によってそれらの症状が改善するのならば、手術する意味があると考えられます。
そこで、「代償期」であっても、眼瞼下垂症手術の「相対的適応」と考え手術を行なうべきだというのが、形成外科における眼瞼下垂の一般的な考え方です。

眼瞼下垂とは文字通り「瞼が下がってくる」状態を指しますが、その病態は様々で、手術適応に関してもいろいろな考え方があります。
厳密には、瞼を吊り上げる「眼瞼挙筋」の機能が損なわれているかうまく伝わらないために、上眼瞼が角膜(黒目)の上に被さって視野が遮られる状態を指します。

しかし、それほど瞼が下がっていなくても眼瞼下垂症手術の「相対的適応」と診断されれば手術を行なうべきだと考えています。

もちろんこれには異論もあり、適応をより厳密に重症の眼瞼下垂のみに限り、軽症に健康保険を適用するのは違法であるとまで断言する眼科医も存在します。(眼科において眼瞼下垂の手術を扱う「眼形成外科学会」の医師などはこの立場を取っているようです。)診察した医師により判断が異なることがあっても医師の裁量権の問題であり、どちらが正しいというものでもありません。

これは

眼瞼下垂症状が全くなくても眼瞼下垂の手術が保険でできる

という意味ではありません(重要)

代償期であっても詳細な診察によって隠れた眼瞼下垂症の客観的症状は明らかになります。肩こりなどの患者さんの主観に基づく訴えだけで診断することはありません。詳しくは下記を参照してください。

眼科による眼瞼下垂の診断

 眼瞼下垂とは文字通り「瞼が下がってくる」状態を指しますが、一般的に眼科では瞳孔が遮られる事によって「視機能が損なわれる」ことをもっとも重視するため、角膜中央部に瞼がどの程度被さってくるかを基準に、

  • 軽症: 黒目の上三分の一程度が隠れているが、瞳孔(ひとみ)は見えているもの
  • 中等症:黒目の中央付近まで瞼が下がり、瞳孔に瞼の縁がかかってくるもの
  • 重症: 黒目の半分以上を瞼が遮り、瞳孔が隠れて視野を得られないもの

のように分類します。従って、軽症のものや一見瞼が下がって見えないものは「眼瞼下垂ではない」「軽度で手術の必要がない」と診断されがちです。

他院のサイトに掲載されている症状の説明図(例)
眼瞼下垂の症状 眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂の症状 眼瞼下垂の症状

さの眼科(佐賀市)、町田美容皮膚科形成外科、ユニタ整形外科・形成外科クリニック、プレッツァ聖心美容クリニックのサイトより一部改変引用(引用元サイトとの利害関係はありません)
※ これらの説明図は、すべて単なる模式図です。単に瞼の開き方の大・中・小のイメージと捉えた方が良さそうです。

形成外科では隠れている症状も見逃しません

しかし形成外科では、眼瞼下垂の症状をより広く捉え、一見重症に見えなくてもいろいろな症状が隠れているのではないかと考えます。
詳しくは上の「代償」についての項目をご覧下さい。

形成外科で重視する眼瞼下垂の症状

例えばある患者さんの場合には、以下のような症状が見られました。
眼瞼下垂の症状

保険適応可能であることをご説明し、一度ご自宅に戻って再検討した上での来院をお勧めしています。

健康保険適用の眼瞼下垂の手術を予約したい時

明らかな眼瞼下垂の症状があり、保険適応が認められると診断した場合も、一旦診察を終えて一度ゆっくりご自宅で考えてきていただく時間を取るようにしています。次回診察から保険診療に切り替え、手術予約に進む場合は保険で血液検査を行います。手術日を予約される際、予約料(自費2,200円)が別途かかります。合計5,500円程度のお支払になります。
保険診療分のお支払いは自動精算機で行っていただきますので現金をご用意ください。

  • 診察日現在で予約が取れるおよその日程をご案内します。
  • 手術日が確定できない場合、一旦お帰りいただき再度予定を調整していただきます。
  • 手術日時を確定できる場合、コンピュータ上で予約を登録します。通常1ヶ月先程度のご予約になりますが、季節や状況によっては数ヶ月先まで予約が埋まっていることもあります。
    (予約料が発生します。保険手術の予約料は自費で2,200円です)
  • 一旦予約した日時は変更が困難です。予約に伴ってお支払いただいた予約料は、日程変更の場合返却されません。手術をしたいがお休みが取れるかわからない、など日程が不確実な場合はお休みの調整ができてから再度おいでいただいています。
  • 手術日がおよそ1ヶ月以内であれば、血圧測定、血液検査を行います。
    (血液検査料がかかります。健康保険適応でおよそ2〜3,000円程度です)
  • 写真撮影や詳しい計測が必要であれば、追加して行います。
  • 説明書、同意書を用いて注意点を説明し、チェック欄ににチェックを入れご署名をいただきます。
  • 同意書のコピーをとって書類はお返しします。
  • 予約は完了です。診察料等を精算後、予約表とQRコードを同意書とともにお持ち帰りください。
  • 手術日当日にご来院ください。(必ず保険証とQRコードをお持ちください。)心配な点ができたり予定が合わなくなった場合は、まずフォームでご連絡いただき、予約をとってもう一度診察を受けてください。

手術日まで期間が空いている場合は、およそ手術日1ヶ月前までに再度受診していただき、その際に血液検査や同意書説明を行います。手術日を決めた時に予約料がかかります。

眼瞼下垂ではないとき

眼瞼下垂の症状はないが、瞼の運動に異常や障害が認められる場合、症状によって適切な専門施設をご案内し、必要であれば紹介状を書き、予約を取ります。

  • 眼科、神経内科、心療内科、精神科など、適切な診療科が他にあることをご説明します。
  • 当クリニックと交流のある施設や医師の専門性や治療の概略などをお話しします。
  • お近くの医療施設が適当であれば、その旨ご案内します。
  • 診察の概要や診断の根拠などを書いた紹介状を書くことにして、一旦診察を終了します。(通常その場ですぐには書けないため)診療情報提供料をいただきます。
  • 地域医療センター等で予約が取れる場合は、当クリニックから予約を取ります。(その際通院可能な日時を伺い確認します)
  • 紹介先住所等の情報と予約票をお渡しします。
  • 通常、紹介状がかけた時点で、紹介先の医療機関にFAX、郵便等で紹介状を直接送ります。
  • 再来していただき、紹介状をお渡しします。
  • 先方からの予約票等が診察当日間に合わない場合、お渡しできるようになった時点でご連絡を差し上げます。
  • 紹介先を受診されると、通常紹介先より当クリニックに返信があります。

眼瞼痙攣、重症筋無力症、Horner症候群など

眼瞼痙攣はそれほど稀ではなく、けいれんと名前がついていますがピクピクするというよりは「瞼が開けにくい」ことが症状の主体なので、眼瞼下垂として相談に来られる方は多いです。

眼瞼下垂の手術をすると眼は開くのですが、この病気の本体は眼輪筋の強縮であるため、辛さが増すことがあります。手術療法もありますが、通常は神経内科で薬剤による治療をする方が良いと思います。眼瞼痙攣に精通した医師は少ないながら関西にもいるので、必要と思えばご紹介しています。
重症筋無力症は稀な病気ですが、時々診察に来られることがあります。血液検査などいくつか確定診断法はありますが、必ず陽性になる訳ではなく費用もかかるので、疑わしい場合は専門施設をご紹介しています。他にも似た症状が出る病気はいくつかあり、中には手術で改善できるものもあります。

眼瞼下垂症に似て非なる症状として、いわゆる一重まぶたや奥二重で皮膚がたるみ、上眼瞼皮膚の折り返し点が睫毛より下に下がっているため、結果として黒目(角膜)が瞼の皮膚に隠れてしまう、という症状があります。

この場合、眼瞼挙筋の機能は障害されていないので眼瞼下垂ではない、と考えると「偽眼瞼下垂症」という病名になり、筋肉ではなく皮膚だけの問題であるという立場からは「眼瞼皮膚弛緩症」という病名がつけられます。
しかし、眼瞼下垂とは瞼(の一部)が垂れ下がっている病態と捉えれば、これも眼瞼下垂の一種として考えることは可能です。(代表的術式である眼瞼挙筋前転法などの保険で行う手術の適応にはなりませんが。)

生まれつきの「一重まぶた」を眼瞼下垂と言って良いかは議論のあるところです。瞼裂が狭く角膜(黒目)が3分の2くらいしか出ていない人も稀ではありません。しかし、こうした患者さんに重瞼ラインを作る器具などを押し当てて二重を作り目を開けてもらうと、ほとんどの場合きちんと開瞼し、上方視も問題なく行えます。

眼瞼挙筋の線維の末端が、間に脂肪などがあって皮膚まで届いていないために、本来の重瞼ラインの部分が奥に折り畳まれず、反対にまつげの上にせり出してくるのが主因です。もちろんご本人の立場では、力を入れて目を見開いてもぱっちりとは開かず、理想の表情を保つために眼瞼周りの筋肉に力を入れるので疲労し、目の奥の痛みや肩こりなどの症状が出ます。

しかし、一重まぶたの「病態」の主体は皮膚にあり、眼瞼挙筋は位置も動きも正常ですから、前転法による眼瞼下垂症手術の適応にはなりません。普通に「重瞼手術」を受ければいいのです。

保険で手術したいために、診察の際にわざと視線を動かさなかったり眉に力を入れて目を開けない患者さんが時々いますが、不自然でありほとんどの場合誤魔化せません。病気を装うので「詐病」と言います。こうした時は時間をおいて同じ動作を繰り返してもらうと、動きが一定せず計測値もバラバラとなりバレます。
眼瞼下垂は筋肉をいじる手術です。必要のない手術をすると障害が残ることもあります。一重まぶたの患者さんは、皮膚の折れ目をつける「重瞼手術」を受けましょう。

花粉症やアトピー性皮膚炎などの炎症や、コンタクトレンズの付け外し、アイプチなどの重瞼を作るテープや糊、その他様々な原因で皮膚が伸びてしまった方はかなり多い割合を占めます。もちろんこうした原因で、「本当の」眼瞼下垂になってしまう方もおり、両方を合併しているかたもたくさんいます。ある程度年齢の高い眼瞼下垂の患者さんは、必ずと言っていいくらい皮膚の延長を合併しています。

ただ、逆は必ずしも正しくなく、筋肉の動きや位置は正常で、皮膚だけが伸びている方の方が多く見られます。こうした方には便宜上「眼瞼皮膚弛緩症」という病名をつけていますが、もちろんこれには保険手術の適応はなく、自費の「上瞼のたるみ取り」手術をお勧めすることになります。

最近眉下切開による皮膚切除が流行っており、色々と理屈がつけられていますが、必ずしも従来の「二重の部分の皮膚を切り取る」手術に比べて優れているわけではないと思っています。 瞼は薄い部分が伸びるので、眉下の「伸びにくい」皮膚を切り取ることで不自然さが増すと考えています。ラインをいじらないから印象が変わらないというのは明らかな嘘で、この種の手術は印象を変えるために行うわけですから、切り取るべき部分の決定は慎重にすべきです。
もちろん向き不向きはあり、症状によっては適応になる方もいるとは考えます。しかし、流行だから、と手術を受けて不自然さに悩んでいる方も多く、またそうなった場合修正が非常に難しいのです。

上瞼のたるみを切除するへ

治療の流れは概ね保険の手術と同じですが、緊急性のないご希望による手術になりますので、費用の概略を説明した上で一旦診察を終了し、ご自宅に戻って一度冷静になって再検討した上での来院をお勧めしています。

美容手術のご希望があり、初診日にそのまま引き続いて手術を予約される場合、予約や検査の手順は保険の場合とほぼ同じですが、当日お支払いいただく検査料、予約料などは全て自費料金となります。(通常は初診料を含めて 27,500円)

手術料は同意書に記入した金額(消費税込み)を、手術の1週間前までにお振込いただきます。当日お支払いされる場合は現金のみとなります。VISAなどのクレジットカードは使えないのでご注意ください。

眼瞼下垂の手術について

眼瞼下垂の手術は、先天性で筋肉の働きがほとんどない場合と、後天性で瞼の開閉自体には支障がない場合とで大きく異なります。
そのため眼瞼挙筋機能の評価は、とても重要なポイントです。

当院では、先天性の一部のものを除き、基本的に眼瞼挙筋短縮/前転法を基本とした術式を用いています。
症状により、腱膜のタッキングのみを行ったり、眼輪筋・脂肪組織の切除を追加したりしますが、保険適応となる症状であれば(吊上げ法による手術を除き)術式によって費用が異なることはありません。 
(手術に際しては美容的な側面にも十分注意を払いますが、重瞼幅何ミリ等の細かなご注文には一部応じかねる場合もあります。)
先天性の場合でも、いくらかでも筋肉の働きがあれば、通常はまず「挙筋短縮/前転法」が適応になります。しかしこの方法で効果がない場合は「吊り上げ法」による手術が必要となります。

先天性の重度の眼瞼下垂では、眼瞼挙筋の完全欠損、または非常に菲薄化して収縮力の全くない場合、脂肪変性に陥って筋線維が乏しい場合などがあり、この場合は挙筋を前転しても収縮の強化が期待できないので最初から筋膜や人工物による吊上げ術を行なうべきだとする考え方があります。

しかし、横走靭帯が欠損していない限り、挙筋前転法と同じ方法で瞼板を靭帯に固定して吊り上げる手術が可能です。
この方法では吊上げ効果は限られますが上眼瞼のカーブが自然に保たれるので外見上の違和感が少なく、術後の回復も早いのでまず試みるべきでしょう。

挙筋機能があれば、前転の程度により開瞼をある程度コントロールできます。

多くの後天性(大人になってから症状が出てくる)眼瞼下垂では、挙筋機能は全く正常である場合がほとんどなので、タッキングのみでも症状は劇的に改善します。
しかし、やや古い術式で手術を受けた患者さんの再手術では、様々な重要部品が切除されたり切断されたりしている事が多く、必ずしも思い通りの手術ができるとは限りません。

挙筋前転法で改善するかがポイント

後天性眼瞼下垂では腱膜性が多く、先天性では単純性が多い。教科書にはこう書いてありますが、実際にはなかなか診断に至らないこともあります。色々な症状が混ざり合い、特定できないこともあります。

そうした場合、その症状が「眼瞼下垂の手術」で改善するか悪化しそうか、が一つのポイントになります。上にあげた眼瞼痙攣など、手術をすることで悪化が予想されれば他の治療を優先します。

思い切って手術をしてしまった方がいいと思うこともあり、その際には術後に別の治療が必要になる可能性も説明した上で手術をお引き受けします。

眼瞼下垂と自己診断して受診される方の中に、眼瞼痙攣の症状のために目が開けにくいのではないかと思われる患者さんが時々います。
痙攣症状があっても通常の眼瞼下垂の手術で瞼は開きやすくなりますが、眉をしかめる(眉間に縦じわが入る)、額やこめかみの重い感じ、肩こりなどの自律神経症状などには効果がないため、むしろ術前より辛いと感じる方もいます。
大江橋クリニックでは、眼瞼痙攣を疑った場合、手術前に神経内科の診察を受けるようお勧めしております。

定型的な眼瞼下垂の手術を行っていると、眼窩隔膜と挙筋腱膜の移行部であるいわゆるwhite lineが瞼板の上方にずり上がって、薄い結膜(とミュラー筋)を透かして角膜の黒い色が透見できることがあります。

一部の医師は、これは手術の過程で付着していたものを剥がしてしまい(医原的に)外れたものであって、元々は外れていない、外れるはずがないと主張しています。
しかし様々な患者さんを見ていると、やはり術前から外れていたと考えた方が症状の説明がつく場合も多く、なかなか信じることができません。

一部の患者さんの間に、症状や原因に関わらず、いわゆる「松尾式」手術が「最も良い方法である」という迷信のようなものが流行し、その結果特定の医療機関がひどく混雑したり、未熟な技量の医師が「松尾式」をうたって患者を集めたりしているようです。

私の考えでは、信州大学方式はその診断方法や考え方に特徴があるのであって、手術法自体は全国各地でふつうに行われている方法と比べて特に変わったものではないというふうに認識しています。
大半の後天性眼瞼下垂は、ある程度経験を積んだ形成外科医であればまずまずの手術結果を出せるものだと考えます。

むしろ、術後のケアやテーピングなど、手術以外の細かな点が手術結果を左右しますので、忙しすぎる医療機関や遠くて通いにくい病院は避けるのが賢明です。まず近くのお医者さんに相談しましょう。何か些細なトラブルがあったときに、すぐに診てもらえるというのが一番大切な点だと思います。

眼瞼下垂の症状のうちいわゆる自律神経症状(肩こり、吐き気、頭痛、うつ症状など多彩な症状を含みます)が自律神経の支配下にあるミュラー筋の過緊張にあるという考え方から、以前は分離せず一体のものとして切除していたミュラー筋と眼瞼挙筋(動眼神経支配)を別々に扱う術式が生まれ、症状と無関係にミュラー筋のみを縫い縮めたり、あるいは逆にミュラー筋に一切手をつけないという医師も現れました。
その結果一部の施設で、術後にかえって症状が悪化したり眼瞼痙攣が誘発される患者さんが増加したと聞き及んでいます。

大半の後天性眼瞼下垂は、眼瞼挙筋腱膜をきちんと同定し、所定の位置に縫合する事によってまずまずの手術結果を出せるものだと考えます。ミュラー筋の処理は、術中所見によってその都度決定すべきではないでしょうか。
患者さんの中には軽度の先天性眼瞼下垂をもともと持っていたと思われる方もいれば、美容手術やアートメイクなどで瘢痕が充満し、瞼が正常な構造ではなくなってしまった方もおられます。こうした個人差を考慮せずに、同一の術式を当てはめる事が良くない結果を生んでいるのではないかと想像します。〇〇式、にこだわらず、ある程度経験を積んだ医師に手術を任せる事が、良い結果を出す最善の方法ではないかと考えます。

一部の患者さんの間に、挙筋前転法は前転(前に引っ張る)だけで眼瞼挙筋を切り取らないので安全だが、挙筋短縮法は筋肉を切り取って捨ててしまうのであぶない、というような、不確かな知識に基づいた間違った情報が流布しています。

私は自分の行なっている手術を短縮/前転法と名付けていますが、これは前転もし短縮もされるためこう呼んでいます。筋膜を前に引き出すことを「前転」といい、筋膜の実質的な長さを短縮するために前転するわけです。患者さんは「術式の名前」に騙される傾向がありますが、実際には同じ名前の手術法でも医師によって細部は少しずつ異なり、「術式の名前」はあまり意味がありません。これは右上に述べた「松尾式(松尾法・信州大学方式等々)」と呼ばれる方法でも同じです。それぞれの医師が自分なりの味付けを行って効果的と思われる方法で手術を行っています。術式名ではなく医師の技量に信頼が置けるかどうか判断して下さい。

目頭切開を一緒にしたい、この際下瞼のたるみもとりたい、という方もいますが、お勧めしません。
眼瞼挙筋の調整は、瞼周囲のいろいろな筋肉のバランスに影響を及ぼします。できれば3ヶ月〜6ヶ月以上経って傷が落ち着いてからにした方が無難です。

目頭切開を希望される方は、いくらかでも眼の開きを大きく見せたいと考えておられるようですが、眼瞼下垂の手術単独で自然にぱっちりとした瞼になりますし、切開線の工夫により平行二重を作成することも可能です。
下眼瞼のたるみや三白眼は眼瞼下垂が改善すると同時に改善することも多いので、経過を見ることを強くお勧めしています。

眼瞼下垂手術と同時に瞼の美容手術を行う場合、健康保険の原則である「混合診療の禁止」に当たるかどうかは医師により判断の分かれるところです。
同一の部位に行った手術であっても、別個の目的を持った別の手術であると考えることもできるかもしれません。
しかし大江橋クリニックでは、保険診療の原則通り、美容の要素を加味した場合、一連の手術そのものが保険適応外(自費診療)になるものと理解しております。

健康保険では二重の幅の指定はできません、とか、皮膚のたるみをとるのは追加で自費になります、などと説明しているクリニックもあるようです。
保険の治療では「機能の改善」はできるが「見た目の改善」はできないと言いたげです。
また、あからさまにではありませんが、保険の手術は手を抜くが、美容なら丁寧にやるようなことを臭わせる医師もいます。

保険の手術料が低く抑えられているために、細かく神経を使う手術に見合わないと考えているのだと思われます。

大江橋クリニックでは、機能の改善と美容的な改善とは表裏一体であり、別物ではないと考えています。自然な眼の形は機能的で美しいものです。生まれつき持っている筈の機能を十分に生かすことが美しさを生み出すのだと思います。手術ではまずそれを目指します。

そのために必要であれば、重瞼幅のある程度の調整や適度の皮膚切除は保険適用範囲の手術で十分対応可能と考えます。
ただし、機能的な改善とは直接結びつかない純粋に美容的な要求は、ご本人の趣味嗜好の範疇となるため自費とさせていただきます。ここまでが保険という切り分けは難しいのですが美容と判断した場合は、手術全体が美容手術となります。保険の手術と自費の手術を同時に行うことはできません。

 瞼の手術は、開き具合や形の調節が重要なウエイトを占めるため、局所麻酔の注射で行います。
痛くない麻酔を目指すため、医師によっていろいろな方法が工夫されていますが(瞼の裏側「結膜側」に最初に針を刺す方が痛くないとか、目頭に最初に針を刺した方が痛くないとか、点眼「目薬」麻酔を先にするとか、麻酔薬にアルカリ性の薬品を混ぜるとか、細い針を使うとか、自動注入器を使うとか実に様々)、私は私なりのノウハウを持っており、いろいろな美容外科を渡り歩いた患者さんに聞いたところでは、痛みの少ない方であるらしいので麻酔の注射には自信を持っています。
ただし、何度も手術を繰り返して瞼の中が傷になっている方や体調・皮膚の状態によっては、やはりある程度の痛みは避けられません。一般に手術を繰り返すほど痛みも腫れも増す傾向にあるので、できる限り1回の手術で結果を出すように心がけています。

なお、麻酔の量が少ないから腫れない、というのは俗説でありあまり根拠がないと思っています。痛いのを我慢することの方が後で大きく腫れる原因になります。しっかりと麻酔をして痛くない手術をしましょう。

  1. 手術台に仰向けになり、写真撮影とマーキングをします
  2. 色のつかない消毒液で顔の消毒をします
  3. 顔の上に目の部分だけ丸い穴の開いたシーツをかけます
  4. 片方ずつ(通常は右から)計測してインクで印を付けます
  5. 目尻側の皮膚の表面から徐々に内側に向けて麻酔の注射をします
  6. 印を付けた部分の皮膚と眼輪筋をメスで切開し、必要な幅を切除します
  7. 眼輪筋の一部と瞼板前組織を睫毛の生え際近くまで切除します
  8. 切開線の上下に糸を掛けて手術部位を展開します
  9. 眼窩隔膜と眼瞼挙筋腱膜の接合部を見つけ、位置を確認します
  10. 必要であれば隔膜を切開し、結膜と眼瞼挙筋腱膜を剥離します
  11. 眼瞼挙筋腱膜を必要なだけ前転して瞼板に縫合します(通常は3箇所)
  12. 目の開き方を確かめてから牽引糸を外し、切開部を連続縫合します
  13. 通常はガーゼとテープで厳重に圧迫固定して終了します
    1. 手術当日は顔を洗えません(洗髪、入浴等も控えていただきます)
    2. コンタクトレンズは約2週間お休みいただきます
    3. お渡しする内服薬は必ずすべて飲みきってください
    4. アイメイクは抜糸まで1週間程度お休みください
    5. 当日よりも翌日の朝の方がまぶたは腫れます
    6. 保冷剤などで患部でなくその周囲を冷やしてください
    7. マッサージやエステは腫れが引くまで行わないでください
    8. むくみをとる目的での利尿剤の服用は逆効果になります
    9. 翌日に診察を受けて異常のない事を確認させてください
    10. 腫れや傷跡の赤みは人により数ヶ月続く場合があります
    11. タバコは傷の治りを極端に遅らせますので術後のみでなく術前もお勧めしません
    12. 食事の制限はありませんがアルコールは控えてください
    13. 腫れが引くと二重の幅は徐々に狭くなります

症例

他院で手術したが結果が良くなかった例(1)

左の患者さんは、右眼の先天性眼瞼下垂症に対してすでに複数の病院(いずれも大阪では著名な形成外科のある病院です)で4回の眼瞼下垂症手術を受けています。
前項で説明したように、先天性では健側と全く同じようにぱっちり開けようと思うと色々な不具合が出ることもあるので、多少開き加減が少なく左右差があっても我慢しなければならないことがあるのですが、この患者さんはそうした説明を十分に受けなかったため、もう少しもう少しと手術を繰り返した末、こうした結果になってしまったようです。確かに瞼は開いてはいるのですが、非常に不自然な外観です。

手術を繰り返したことで、眉の下が大きく陥凹して不自然にくっきりした幅広の二重瞼になっています。この患者さんの場合には、眼瞼下垂そのものは前医の手術で一応治っていますので、形の不自然さを改善する目的で手術をしました。

瞼の中は傷痕の硬い組織で充満しており、眼輪筋などの筋肉も眼窩脂肪も大部分切除され、本格的に改善するには脂肪移植が必要でしたが、そこまでは望まないということで二重のラインを浅くするにとどめることにしました。(癒着した二重のラインを浅くするのは、脂肪移植なしではかなり難しい手術になります。)
基本的には筋肉の処理は行わず、従って下の写真でもわかる様に目の開き方自体にはほぼ変化はありませんが、不自然さはだいぶ改善しました。左側を右に合わせて自然な二重にするとより左右差が目立たないのでしょうが、患者さんが希望されずそのままとしています。

他院で手術したが結果が良くなかった例(2)

下の患者さんは他院で既に10回以上の修正手術を受けています。瞼の中は傷痕の硬い組織で充満しており、眼輪筋などの筋肉も眼窩脂肪も大部分切除され、脂肪移植や人工物の注入、さらに移植した異物の切除、再移植などを繰り返し受けています。ふたえのラインは無くなって逆に傷として盛り上がっています(右、手術開始前のデザイン。)皮膚の表面には凸凹した傷がたくさんあり、血管が浮いて厳しい条件です。

下段左は術後1ヶ月。自然とは言えませんが何とかふたえのラインは出来ました。右はその後半年。腫れが引くと、目はぱっちりとあきましたが、どうしてもわずかな左右差や不自然さが残ってしまいます。

大江橋クリニックでは、こうした条件の悪い難しい患者さんでも何とか美容的に許容できる結果を得られるよう、時間のかかる困難な手術も行なっています。

編集中

見逃されていることが多い軽度の単純性眼瞼下垂

若い患者さんなのに挙筋腱膜がずれていることもある

※ 皮膚を切り取らない手術(埋没法や結膜側からの手術)では、
効果は限定的だと考えています。

※ いわゆる眉下切開(眉毛下縁切開からの皮膚切除)は、
少なくとも初回手術では行わないほうが良いと考えています。

手術してみないとわからないこともある

大江橋クリニックで行っているまぶたの手術の中で、最も多いのが眼瞼下垂症手術です。その中でも先天性眼瞼下垂と思われる方の中には、筋肉の発達が悪く瞼を持ち上げる力が弱いからなのか、両眼とも筋肉の力は正常だが付着している位置がずれているためなのか、手術してみるまでわからない患者さんも多くいます。

眼瞼下垂症手術の一例:ポイントは目を開けすぎないことでした
左先天性眼瞼下垂・術後右の眼瞼下垂がやや進行したため
4ヶ月後に右も手術した:術前術後(左術後1年)

上の例は左の先天性眼瞼下垂症手術です。右は初診時にははっきりした眼瞼下垂症状がなかったのですが、左が改善すると右にも後天性の眼瞼下垂があることがはっきりしてきたため、左側と同じ眼瞼挙筋前転法で手術しました。美容面を優先するなら、本来ならもう少しパッチリした目にしたいところですが、術後もあまりパッチリと開いているように見えないのには理由があります

1回目の左のみの手術の術前術後です。やや控えめな開け方にとどめています。上方視は改善していますが、この程度の眼瞼挙筋の前転でも左目がきちんと閉じません(抜糸時の写真、この後1週間から1ヶ月程度で徐々に閉じられるようになります。)これ以上開けると1ヶ月以上たっても左目が閉じなくなります。

2回目の右目の術後を初診の時と比べてみます。右は先天性ではないので、眼瞼挙筋前転法で手術をすると上方視でかなりぱっちり開きます。左の先天性と差が出過ぎないよう、開き方を調整しています。上を見た時と下を見たときの左右の瞼の動きの差に注目してください。右のほうが大きく上がり大きく下がります。

ご覧のように先天性の眼瞼下垂では筋肉の動きが悪く、まぶたが上がらないだけでなく下がらないという特徴があります。上げすぎると目が閉じられなくなるだけでなく、下を向いた時の左右差が拡大して不自然になります。この場合、両目が閉じられるギリギリのところで左右に差があまり出ないように開瞼幅を調整する必要があります。

単に正面視したときにパッチリ開いているようにみせるだけなら、両目とももっと開瞼幅を大きくできます。一見キレイに見えますが、このような「正面視でぱっちり開ける」ことだけを重視した手術を行なってしまうと、上方視では右が開きすぎ、下方視では左が下がらず、しかも左は目がきちんと閉じられずドライアイなどの不快な症状が続きます。そうした不都合を避けるため、左右とも少し開き加減を減らしています。こうすることで、普段の生活において不自然な左右差を避けつつ、見ためと視機能の若干の改善が得られるよう調整したのです。100%の満足は得られないことを、術前にご説明しています。

様々な眼瞼下垂症の初回・修正手術をはじめ、瞼のたるみの改善、瞼のできもの切除など、瞼の形を損なう様々な原因をとりのぞき、瞼をきれいに整える手術を得意としています。

もちろんこういったサイトの常として、症例写真の多くは(リスクや合併症の説明をする場合を除き)結果が良くご本人も納得されている患者さんの写真を使用しています。患者さんによっては残念ながら左右差が残るなどご希望通りに仕上がらないこともあります。骨格や皮膚の状態、前医の手術後の傷の程度などによっては、再手術を行ってもきれいに修正できないことすらあります。
大江橋クリニックでは、たとえ条件が悪くともそれなりの結果が出せるよう、それぞれの患者さんに対して真剣に向き合って治療しています。

眼瞼下垂の初診(初回診療)について

眼瞼下垂症の初診は原則として自費診療になります。眼瞼下垂症状がなく、保険適応の病名をつけられない相談者が多いためです。
眼瞼下垂の診断・手術を希望して受診される患者さんのおよそ7割程度は、当科で診察すると「眼瞼下垂」の症状がありません。まぶたが細く見える、あるいは肩こり・頭痛がある、などの症状だけでは眼瞼下垂とは言えないことが多いのです。
もちろん何らかの「症状」はありますが、それが眼瞼下垂とは結びつかないことが多いです。(他院の術後、不満足な仕上がりで相談される場合なども、眼瞼下垂の症状「だけ」は治ってしまっていることがあります。)
特に多いのが加齢等による「まぶたのたるみ」と「生まれつきのひとえまぶた」です。これは病気とは言えず、美容手術(自費)による「たるみ取り手術」「重瞼(ふたえ)手術」の対象になります。
保険手術の適応となる「病名」がつかないと眼瞼下垂の診察として扱う事ができず、保険診療ができないため、初診料の扱いに苦慮してきました。以前は「眼瞼皮膚弛緩症」などの「便宜上の病名」をつけ対処しておりましたが、これは厳密には別の病態です。
色々と悩んだ結果、眼瞼下垂の相談に関しては、まず自費で相談を受けていただき、眼瞼下垂症の診断が確定すればその後健康保険に切り替える方法を取ることにしました。ご理解ください。

眼瞼下垂の症状の一例

多くのサイトで「眼瞼下垂とは、瞼が下がること」のような粗雑な説明がなされています。まぶたのどこが、どのように下がるのかすら明確な記述はありません。眼瞼下垂を専門としない医療機関だけでなく、専門と称している医療機関でさえも、外見を一瞥しただけで、本当は眼瞼下垂の症状がない人に「眼瞼下垂」の病名をつけ、手術までしているところもあります。
まず第一に、眼瞼下垂の診断は多くの手順を踏んで慎重になされるべきです。手術法も、基本的には標準的な術式で行われるべきです。ふたえの手術と似たように見えるため、瞼の構造を熟知していない医師により、見様見真似で埋没法もどきの手術が行われるなど安易な手術で多くの被害者が出ています。「簡単な」手術を勧めてくる医師の中には、標準的な手術をする技量がない医師も多く混じっています。切らない手術を勧められたら疑った方が良いと思います。
症状と治療法が合致していない場合、結果が良くないのは当然のことです。まずきちんと診断をつけましょう。

眼瞼下垂であると思わずにふたえの手術を受けていた

これとは逆に、二重まぶたにしたいと思い単純な二重の手術(埋没法など)を何回も繰り返しても左右差が揃わなかったり、片側だけすぐ取れるという患者さんの中には、片側だけの先天性眼瞼下垂の方が多いのではないかと思っています。
こうした場合、片側だけ眼瞼下垂の手術をするのも一つの方法です(下図参照)。

他院で埋没法による二重まぶたの手術を受けてあまり改善しなかった、片眼の先天性眼瞼下垂の一例(左のみ保険適用の眼瞼下垂症手術をして左右差が改善しました。上方視してもらうと特に改善度がよくわかります。手術していない右側も改善しています。右の重瞼ラインの乱れは後日左に合わせて自費での重瞼手術を予定しています)

先天性眼瞼下垂に後天性の下垂が合併する事がある

コンタクトレンズの使用は後天性眼瞼下垂の原因の一つですが、このほか特に思い当たる原因がなくても徐々に片方の眼瞼下垂が進行してくることもよくあります。実は軽度の先天性眼瞼下垂が元々あったものが見逃されている場合があるのではないかと思っています。

下図は上にも拡大写真をあげましたが、両側の眼瞼下垂が時間差で進行してきた例です。コンタクトレンズ性眼瞼下垂では発症の時期に左右差があり、どちらかが先行して下がってくることがあります。両側に症状がありますが、まず重症の左側を先に手術しました。右にも症状があるのでぱっちり開けすぎると逆に左右差が目立ちます。男性であることも考慮し、あまり開けすぎないようにして左右差を調整しています。

左側のみ手術して見た目を揃えた男性の眼瞼下垂の一例。右側もこの数年後に下垂が進行してきたため、9年後には両側を同時に手術しました。
PC版の眼瞼下垂のページに手術直後からの経過の写真などがあります。

下が同じ患者さんの9年後です。年月の経過でやや皮膚にタルミは出ていますが、下垂症状の後戻りはあまりありませんでした。皮膚切除とともに、眼瞼挙筋を固定した位置の微調整を行いました。進行の遅かった右目はもともと先天性ではないため、術後の開瞼は左よりも良好です。

手術をしなかった右目は、その後9年間で眉の挙上と眼瞼陥凹が進行しています。(写真左)
右の写真は術後日が浅くまぶた周囲に皮膚炎もあるためやや不自然に見えますが、3ヶ月くらいで左右差も解消してきます。

眼瞼下垂の自覚はないがぱっちりさせたい

はっきりした眼瞼下垂の症状がない場合、通常美容手術の対象となりますが、逆に美容的な希望優先で行う二重手術の際に、眼瞼挙筋の瞼板への固定(いわゆるタッキング)を追加して隠れた眼瞼下垂も治してしまうこともあります。(このような場合、事前にお約束した二重の手術として行い、タッキングに伴う差額や追加料金は頂いていませんので、言って見れば患者さんにとってお得な手術です)

重瞼希望の患者さんで、術前の診察でははっきりとした眼瞼下垂症状はなかったが、重瞼手術(切開法)の際に眼瞼挙筋腱膜を瞼板に固定することで瞼が楽に綺麗に開くようになった女性の潜在性眼瞼下垂の一例

大切なご注意

もちろん手術ですからダウンタイムもリスクもそれなりにあり、回復までの時間にも個人差がかなりあります。
また元の症状の違いによって誰でも左右差なく綺麗に治るという保証はありません。特に、眼瞼挙筋の力が生まれつき左右で違う先天性の眼瞼下垂では、一度の手術で左右差を完全に無くすことは難しいものですし、筋肉の動きが悪い場合には「ぱっちりあけてしまう」ことで逆に「目がつぶれない」という症状が悪化してしまうため、ほどほどの改善で我慢しなければならないこともあります。
患者さんの日常生活で何が困るのかを考慮せず、単純に「ぱっちり開くように」手術され、術後のフォローも不十分なため苦しんでいる患者さんも時々見られます。手術後は眼瞼挙筋だけでなく目の周りの多くの筋肉が今までと違う動きをするようになるため、人によっては術後の「筋トレ」が必要になったり、落ち着くまで数ヶ月を必要としたり、視線を動かす時に不自然にならないように練習しなければならないこともあります。
手術とは、そうした術後管理も含めて一つの治療です。手術したらそれで終わりではなく、術前から術後まで長い時間かけて良い結果を得るよう努力することで、初めてその手術が成功したと言えるのです。

編集中