耳のケロイドにステロイド注射をすると治りにくくなる

ピアスホールの不適切なケアなどから、耳介にはしばしばケロイドが発生します。
一般にケロイドは不用意に切除すると再発し、ますます大きくなるため手術は勧められませんが、耳介のケロイドは例外的に、完全切除すると治ることが多いのです。

その際の基本は完全切除。耳の形が変わることを気にして中途半端に一部の組織を残してしまうと、高率に再発します。
完全にケロイドを切除した後は耳の変形が残ることが多いため、正常な形に近づける「再建」が必要となります。通常は耳の後ろなど近くの皮膚を移動させる「皮弁作成術」をおこなって欠損を塞ぎ耳の形を修正しますが、時には一度切り取った皮膚を移植する「全層植皮術」が必要となることもあります。

ケロイドが大きくなってくると(学会で推奨している標準治療としてステロイド注射が推奨されているため)「ケナコルト」というステロイド懸濁液注射をする医師が多いのですが、これは困ったものだと思っています。ステロイド注射で一時的に小さくなるとは言え、注射のみでケロイドが消失することはなく、時間が経てば効果がなくなるため繰り返し注射をしなければなりません。その注射がとても痛いので治療が続かない患者さんが多いことも困ったことです。しかし、弊害はそればかりではなく、ステロイド注射を繰り返した皮膚は脆弱で出血しやすい脆い状態になります。
このような皮膚は切除術後の傷の治りが非常に悪くなるため、術後の治療が長引くことがあります。耳のケロイドにはステロイド注射をして欲しくありません。手術で治したいと思っている方は、医師に勧められても注射はやめてもらいたいと思っています。
なお、手術した後は必ず放射線治療が必要であると書かれている専門書がありますが、それは腫瘍が大きくて完全摘出できずに、あるいは一見正常に見える表面の皮膚を残そうとするために、ケロイドの一部が残って再発するためではないかと思います。大江橋クリニックは個人のクリニックですから手術した後放射線治療はできませんが、他の施設で繰り返し切除やステロイド注射などの治療をしても再発してきたような重症例でも、完全切除できればあまり再発を経験しません。もちろん術後は定期的に通院して適切な治療を続ける必要はあります。
頻用されているステロイド注射とは対照的に、「リザベン」などの内服薬はあまり積極的に処方されていない印象があります。内服薬は治療薬としてだけでなく術後の再発防止にもかなり効果があると思っていて、副作用で飲めない場合を除き、大江橋クリニックでは手術後の患者さんに必ずと行って良いほど飲んでいただきます。ちょっと試して劇的な効果がないからと中断してしまった患者さんが多いようですが、効果を感じるまで数ヶ月から1年以上かかる場合もあり、医師のサポートを受けながら長期間治療を続ける必要があります。

耳介ケロイドは「耳介腫瘍」の一種として扱いますが、手術をする際には「耳介腫瘍摘出術」に上で述べた「皮弁作成術」か「全層植皮術」を加えた手術費用がかかります。症状によって異なりますが健康保険の3割負担で概ね片耳で3万円から5万円程度見ておけばいいのではないかと思います。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です